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Dandelion
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Dandelion 6

ど、と首にヒョウの突き立った男が倒れた。

すぐ後方にいた、腿を刺された大柄な男が、腰の刀を抜いたところだった。
低い姿勢のまま左手も柄にかけて、男の懐に突進した。下から斜めに斬り上げる。重い手応えとともに男の胸が深く切り裂かれ、右腕が握った刀ごと上腕部から落ちた。
男は本能的になのか、刀を左手で受け止めようと追った。神崎はそれを許さず、返す刀を水平に払い、首に刀を食い込ませた。
男が大柄で体勢が不十分だったためか、首を切り落とすまでにはいたらず、刃が頸骨の半ばで止まる。
男は既に絶命していた。ち、と舌打ちしながら、神崎は男の胴体を蹴りつけて、食い込んだ刀を取り戻した。

血刀を払うと、彼は次の獲物を探してすばやく視線を巡らせた。
もう立っているものはいなかった。
ただ一人、加須原が息一つ乱さずに刀の刃を確認している。彼の足下には、喉笛をきれいに貫かれた遺体が三つ、無造作に転がっていた。
どくどくと血があふれ出し、道路の湾曲に沿って側溝に流れ込んでいく。


いや。もう一人いた。
火嘉の奇襲からかばわれた形村が、後ずさりして路地から逃れようとしていた。

「神崎」

加須原が、そちらを見もせずに静かに言った。

「かまわんぞ。お前がやれ」
「うぃっす」

短いやりとりとともに、神崎は血刀を脇に構えて走った。


背を向けて、本格的に逃亡を始めた形村だったが、そう長くは逃げられなかった。
逃走する足元に、カ、とヒョウが突き立ったのだ。彼は足を止めざるを得なかった。火嘉がいつの間にか前方、彼の逃亡経路をふさいでいる。
形村は迷った。
いや、降伏をではない。もはや死は必然だ。
彼が迷ったのは、一矢報いるべき相手についてだった。
前方に立つ公英会幹部の火嘉か。追ってくる名もなき二年生か。加須原は追っても来ない。
加須原か火嘉にもし一太刀でも浴びせれば、それは誇るべき誉れだ。しかし。
火嘉はいつでも、彼を殺すことができた。だがそれをせず、足止めのためだけにヒョウを撃った。

この二年生に殺させるつもりなのだ。
彼はそれを悟った。


突然自ら振り返って抜刀した形村に、神崎は追う足を止めた。
脇に構えたまま、じり、と半歩、すり足で前進する。
背を向けた形村に、火嘉は攻撃しなかった。

「火嘉」
「ん?」
「この二年は、お前たちの何だ」

形村は、神崎に視線をひたと留めたまま、背後の火嘉に呼びかけた。

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