Dandelion 23 *** 「今津さん…畜生!今津さん!」 縞剣会の二年生会員、辻間忠久は焦っていた。 これほど焦燥にかられていなければ、彼は大声を出すことなく、夜陰にまぎれて逃げ延びることができたかもしれない。知り得たことを仲間に伝える機会を作れたかもしれない。 『敵』が彼を見失っている可能性がわずかでもある以上、彼は息をひそめているべきだったのだ。だが彼はそうしなかった。 だから、間もなく訪れた結果は、彼自身が招いたものだった。