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Dandelion
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Dandelion 5

口止めされ、代表にも報告していない。
相手は少数だった。しかし、物陰に潜んで速やかに暗殺するはずが、気づかれてかなりの抵抗にあったのだ。顔を見られ、危うく仲間に報告される寸前に、二人がかりの力業で殲滅した。
結果的には問題なかったものの、代表に知られれば何らかの処分が下っただろう。

「後で詳細を報告してもらうぞ」
「加須原ー見逃してー」
「今は集中しろ。さっさと位置につかんか」

泣きつく火嘉に、加須原は素っ気ない。
溜飲が下がるとはこのことだ。神崎は、仕事を前に気分が浮上するのを感じていた。


加須原に追いやられるように火嘉が移動すると、程なくして形村次生の集団が路地に姿を現した。
建物の陰に身を隠しながら、彼は使い捨てレインコートのジッパーを喉元まで上げた。道を挟んだ向かいに潜む加須原も、同じ動作をしている。
刀を腰に引きつける。鯉口に親指をかけ、鍔を指で押さえる。革靴の足音に耳を澄ませる。深呼吸を一つする。
神崎の準備はこれで終わる。

形村たちは、無駄口一つ叩かず無言で歩いていた。足運びにも緊張がある。
襲撃の可能性があることも、帰路に襲撃を受けるならこの路地だということも、十分わかっているのだろう。
神崎はまぶたを軽く閉じ、カウントダウンを始めた。
形村は群れの中心にいる。先頭が彼らの潜む家屋の陰に至るまで、残り十秒。
四、三、二、一、

「ぐあっ!」

ゼロ、を口に出してつぶやくと同時に、肉を貫く鈍い音と、重い金属音、短いうめきが複数上がった。
合図だ。

彼が全体の状況を目にしたのは、ほんの一瞬だった。
だがいつもこの瞬間だけは、時は静止しているように見える。

彼の潜んでいる家屋の屋根に火嘉が立っている。
火嘉の撃ちだしたヒョウが、二人の男の首と、二人の腕、一人の腿に深々と突き立っていた。とっさに刀で弾いた者が二人。腕で致命傷を防いだ男にかばわれ、形村は無傷だ。
全員の目が火嘉に向いた。
首を貫かれた護衛の足がもつれる。

二人が倒れるより早く、神崎は低い体勢で道に飛び出した。

「な、」

神崎はさほど大柄ではない。
それが、地面を這うような低い姿勢で瞬きの間に足下に迫る。刀を掲げてヒョウを弾いた護衛は、視界の下方ぎりぎりに出現した彼に虚をつかれた。
振り上げた刀を、構える間もなく振り下ろすしかなかった。
刃が届くより先に、神崎は抜刀した。
護衛は目を瞠った。神崎は刀を抜き放ちざま、引いた鞘をそのまま手放し、彼の脇を走り抜けていったのだ。だが、逃げたわけではないことはすぐに知れた。
神崎の刃は、彼の腹を真横に断ち割っていた。一瞬遅れて血が噴き出す。ぐらり、と膝が崩れる。

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