PiPi's World 投稿小説

Dandelion
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 2
 4
の最後へ

Dandelion 4

神崎と火嘉の所属する特殊園芸部『公英会』は、真戒派の末端組織である。
教育機関での戦闘禁止条例は、主に私立の高校を、内戦における影の存在…暗殺、諜報、破壊活動等を担う者たちの温床にした。
秘匿されるべき存在を、文字通り隠すことができる場所として。
内戦に関わらず、何も知らない普通の学生もいる。だがその裏では両派の活動組織が、部活や委員会に名を変えて、勢力をせめぎ合っているのだ。
火嘉正則は彼の先輩であり、直属の上司だった。

宣旨の内容(一応暗号化はされていた)はこうだ。
中立を保つべき生徒会自治会幹部の一人が、封改派と接触を持った。
校内での勢力バランスを傾けようという心算だ。幹部は次の自治会総会で、いくつかの真戒派側の部とサークルに、解散を申し立てることを承諾した。
情報を得て接触した真戒派の交渉に、彼は応じなかった。
その幹部に、粛清指令が下ったのだ。

内容を頭に叩き込んだ後、ライターでコピー紙を灰にして、神崎はため息をついた。
平和な高校生活も、一皮むけばこんなものだ。




下位部員からの電話に、わかった、と応じて、火嘉は携帯を切った。

「時間通りだ。二分後にここを通る」

自治会幹部、形村次生の側には、絶えず彼自身の親衛隊と、封改派の護衛が付いている。
親衛隊四名、護衛三名。形村自身も刀を装備しており、計八名が今回の対象となる。

対して、こちらは公英会副代表の加須原、会計の火嘉、平部員の神崎の三名だ。
不利とは思わなかった。
自身の腕への自負もむろんある。が、今回はチームが特別だった。
先輩二人は二人とも、公英会幹部なのだ。
チームに幹部が一名以上配されることなど滅多にない。十分な条件に加え、加須原はただの幹部ですらなかった。
彼が単独でなくチーム行動をしている事実が、この任務の重要性を語っていた。形村次生の敵対行為の内容や、護衛が強力であるか否かではなく、時期的な意味での重要性。

「んで、作戦は?どうしようか」

火嘉が軽い口調で言った。

「どうもしない。いつも通りだ」

正反対に重々しい加須原のしゃべり方が緊張を誘う。
了解、と火嘉が動き出そうとするのを、神崎は呼び止めた。

「ちょっと待て!携帯、マナーモードにしました?」
「は?」
「忘れないでくださいよ。この間みたいなのは勘弁…」
「何かあったのか?」

加須原が、驚いたようにこちらを見た。

「聞いてくださいよ。前の仕事のとき、潜伏中にこの人の携帯が鳴って、」
「あ、こらバカ、ばらすか普通?」

いつもの仏頂面のまま、加須原が眉間に皺を寄せる。
火嘉があわてて彼の口をふさいだ。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す