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Dandelion
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Dandelion 21

神崎を無視して、火嘉は言った。今度は海士田が顔をしかめた。

「別に余っちゃいないっすよ」
「もう一人面倒みる余裕はねえだろ?」

図星だったのか、海士田はぐっと黙った。
そのとき別の方向から、ふと思いついたように加須原が口をはさんだ。

「俺か、火嘉が目付につけばいいのだろう」

ぽつりとつぶやかれた一言に、全員が口を閉ざして加須原を注視した。

「…何だ」
「どうしても神崎にやらせたいらしいな、加須原」
「ちょうどいい相手と思っただけだ。どうしてもなどとは言わない」

なるほど、と戸部は笑った。

「お前を信じるよ。だが、生徒総会が近い。火嘉とお前には俺についてもらう」
「って、戸部!それは…」
「禾女、海士田、神崎の三名だ。詳細は追って知らせる。……目付なしでどこまでやれるか。見せてもらうぞ、神崎」

火嘉が目を剥いて反論しようとするのを、戸部は手で制した。
名を呼ばれ、神崎は彼の言葉の意味に気付いた。すなわち、目付無しでの仕事、火嘉を通してではなく代表から彼への直接の命令が、入学から実に初めて下されたことに、だ。

保護者無しの殺し合い。…本当の、殺し合いだ。
彼の拳は、ある種の期待に震えた。




その夜、神崎の部屋には、引越祝いなどと称して公英会の面子が勢揃いした。
何か重要な会議でもあるのかと、彼もしばらくは緊張していた。
だが、消灯時間が近づいても、連中は単に部屋を占領して飲み食いしながらだべっているだけだ。
か弱い後輩の身では、海士田以外に叩き出せる者もおらず、彼はため息をついて部屋の外に避難した。


「おい。そろそろ消灯だ。部屋に戻れよ」

三階のテラスで涼んでいた彼を、呼びに来たのは火嘉だった。
黙って従おうとした神崎だったが、ふと思い立ってつぶやいた。

「妙なもんっすね」
「何がよ」

火嘉が振り返る。

「誰も…会の者は誰も戸部の…戸部、先輩、の言葉に疑問一つ抱いてないんすね」
「ああ。んなことか」

あっさりとした火嘉の返事に、神崎は逆に驚いた。

「んなことなんですか?俺はてっきり、俺達の仕事は党の上から来てるものだと思ってた」
「間違っちゃいねえよ」
「党の細胞の一つを、あの人は…」

私物化してはいないか。
そう続けようとした彼を、火嘉は止めた。

「お前、昨日部室で戸部が言ったことの意味、わかってなかったろ」
「…火種がどうってやつですか?」
「学校を獲るっつった方」

神崎が目を上げると、火嘉はなぜか視線をそらした。何かを思い出すように、あきらめるように続ける。

「あいつがやろうと言ったのは、つまり、学内組織の編成だ。生徒自治会と教員理事会を真戒派として組織化する」
「ああ。そいつは立派な…戦っすね」
「安定を否定することから真戒主義は始まる」

火嘉は、少々硬い口調でそうつぶやいた。

「『体制流転を真の戒めと為し…』ですか」

真戒派の綱領第一項だ。長期の一元支配に伴う政治腐敗は、その一切を認めない。

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