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Dandelion
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Dandelion 18


「戸部、正直に言え。中央は君に、君がしようとしている、オルグ活動の許可を与えたのか」
「…問題はそこだ」

戸部は苦笑した。
今津にとっては、予想外の反応だったのだろう。彼は逆に顔をしかめた。

「それなんだよ、今津。今君の言ったような質問は、必ずあるだろうと俺も予想していた。ずいぶん考えた。どう答えるべきか、いや、答えるべきか否か」
「答えないという選択肢があったと?」
「そうだ」

彼はことさらゆっくりと、今津と他の出席者たちを見回した。

「ここで是否を答えたとして、君らに確認のすべがあるのか?」

押し黙る室内に、戸部は続けた。

「無理だろう。中央とこちらからコンタクトをとれる立場の者が、この場にいるはずがない。どころか、中央とつながりがあるかどうかも怪しいな?」

その存在の特殊性から、彼らは直接の命令者以外を知らされていない場合が多いのだ。直属の上司とさえ、相互の連絡は持たない。命令を待つだけだ。
また、指示系統は実に様々だった。
穏健派もいれば実行派もいる。党の上層部全てが同じ行動論理を持っているわけでもない。
まして、彼らは末端だ。党の方針が浸透するまでには時間がかかる。

今津の懐疑的な言葉は、むしろ彼が戸部の案に傾いていることを示していた。

たとえ戸部に権限があり、結果的に彼の提案と同様の任務が降りてきたとしても、現段階で命令されていないことをする立場に彼らはいない。本来ならば。
一昨日の敗北による混乱が、彼らを迷わせていた。
状況を判断することさえ、彼らの権限にはないのだ。しかし彼らはすでに、考えることを始めている。

「…なるほど。つまり、君は証明できない」

今津は椅子に腰をおろした。机の上で指を組む。

「そして、会議室の外には君のチームがいるわけだ。君の背後に控えている二人も数えようか」

組んだ人差し指が、無造作に加須原を指す。

「この会議を中途で退出する者を、君の部下はどうするつもりでいるんだ?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。こいつらはただの保険だ。一網打尽はごめんだろう?」

戸部は不本意そうに言い返した。
言いながら、高猿に笑いかける。彼女は慌てたふうに、ふいと顔をそらした。

「もちろん退出は自由だ。もっとも…君の後輩が噛みついて来るようなら、うちの奴らも相応の対処をするだろう。退出するならば、くれぐれも背後の飼い犬を大人しくさせておくことだ」

思いがけず乱暴な物言いに、はっと火嘉は戸部を見た。
もう一人、息を呑み込んだものがいた。今津の背後に控える二年生だ。飼い犬呼ばわりに、鋭い眼差しが憤怒を帯びた。のみならず、手が刀の柄にかかる。
戸部に向けられる害意に、加須原が、ふと顔を上げた。

だが彼が動く前に、今津は片手を上げて部下を制した。

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