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Dandelion
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Dandelion 17

「形村次生が今朝、自治会幹部を降りたことくらいは知っているだろう。これは公英会の仕事だ」

詳細は省くが、と戸部は続けた。

「形村は封改派と接触し、真戒派に敵対行動をとった。我が校の自治会規約からいって、彼の在任は長くはなかっただろうが、彼はそれを覚悟の上だった。覚悟の上で、何をしようとしたのか」

清閑仁高自治会は政治的に中立でなければならない。自治会役員となる生徒には、親兄弟に至るまで、主義思想について調査が行われる。
公英会が手を下すまでもなく、形村次生は遠からず自治会を放逐されていたはずだ。
にも関わらず、仕事を急いだのには理由がある。
戸部は背後の火嘉を振り返った。
火嘉は鞄から、一冊のファイルを取り出し彼に渡した。

「これは形村が持っていたものだ。内容は…高猿、君には予想がついているようだな?」

顔をこわばらせ、小さくまさかとつぶやいた高猿に、戸部は目をやった。

「これは秘密名簿だ。ここにいる九団体の構成員全員分の」

出席者たちが狼狽にどよめいた。

「どのようにしてこれが作られたのかは調査中だ。だが、これが自治会幹部の手の内にあり、その男は封改派と接触していた。…我々はなかなか危機的状況にいたということだな」

言葉とは裏腹に、戸部はどこか楽しげだった。

「我々・君らは、生きながら無力な個人にされてしまうところだった」

笑いまじりに言う台詞ではない。
だが効果的ではあった。出席者たちの視線が戸部に向く。

「だが、形村が消えたことで、我々は短時間ではあるがアドバンテージを得たわけだ。次に封改派が動き出すこのわずかの間隙に、我々は対策を練らなければならない」
「その『対策』が、ここに来ての我々末端細胞の結託であり、学校改革だと、君はそう言いたいわけか」

口をはさんだのは、普通科三年の今津大介だった。戸部たちにとっても旧知の人物だ。
縞剣会の代表であり、自身は武装していないものの、背後に刀を担いだ後輩を控えさせている。

「君の案の問題点を提示したいんだが。戸部」
「言ってみてくれ」

戸部は鷹揚に頷いた。
今津は起立して、少し間を置いた。机を囲む出席者たちを見回す。

「簡単なことだよ。だが重大な、問題だ。つまり僕も君らも、権限を持っていないってことだ」
「…権限か」
「この清閑仁高校は隠れみのであって、僕らがここに送り込まれたのは、この学校を感化させるためじゃあない。
もし上が、それを必要と考えたら、そのときは我々にさせるのではなく、専門のオルガナイザーを寄こすさ。違うか」

今津は軽く机を叩いた。
その効果をはかるように、戸部を上目遣いににらむ。

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