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Dandelion
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Dandelion 16

戸部の背後に加須原とともに控えていた火嘉は、事前に目を通した秘密名簿から彼女の名を思い起こした。
高猿響子。第二創作演劇部所属、情報システム学科の三年生。

「逆だな。高猿、俺は今、集まるべきだと考えた」
「その根拠と、目的は」

刺すような高猿の問いに、戸部は笑った。

「目的は一つだ。保身のため」
「保身?」

高猿は戸惑いの表情を浮かべた。

「保身。第二要塞を奪われ、鈴間市内で封改派の台頭を阻むものはなくなった。彼らが次に何を始めるかは、どんな幼児の目にも明らかだろう」
「粛清を、予想しているの」
「もちろん。考えてもみたまえ、彼らにとって、我々がどれほど邪魔か」

表だって軍隊を動かすのは、例え自軍といえども簡単なことではない。党首が指一本動かせばそちらへ動くというわけにはいかないのだ。
公的な存在は、動かすのに名分がいる。
だが、彼らには必要ない。とても都合の良い、同じだけ、敵にとっては不都合な道具だ。

「彼らは、法的な手段に訴えたりはしないぞ。我々は見ての通り、ただのおとなしい高校生だからな。やるなら密かに、刑は執行されるだろう」
「それで、」
「我々は互いに隠匿された存在だ。それぞれ別の上司を持ち、横方向のつながりを持たない。各個撃破されたとしても、恐々と自分の番を待つ他ないというわけだ。しかし我々は生き残るべきだ。党の貴重な人材なんだからな」

戸部は一旦言葉を切った。
会議室は、高猿もまた静まりかえっていた。
戸部の饒舌には、奇妙な効果があった。

「今、こうして会議を持ち、我々は一応の面識を持ったわけだ。どう思う?我々が結束すれば何事かなし得るとは思わないか」
「ぼかさずに率直に言うべきだわ。何をしたいというの。結束することで保身し、それから?」

戸部は笑った。

「率直に言おう。俺は君らと組んで、この学校と学生とを我々、鈴間市第三の要塞としたい」

高猿が息をのんだ。
ざわ、と他の代表者たちの間からも不審のざわめきが上がる。

「公的な存在になるつもりだと言うの。それは…飛躍だと思うけれど」
「どうだろう?さほど飛躍しているつもりはない。むしろ、革命運動の始まりとしてはとても普遍的な手段だ。学生を焚きつけてバリケードを築くのはね」
「自治会が放っては置かないわ。『政治活動はその一切を禁止』。自治会規約を破れば、封改派のみならず、彼らまでも敵に回すことになる」

彼らは完全にセクト性を廃した、ただの執行者だ。
理念も思想も黙して語らず、ただ党の耳目であり刃であること。それが彼らの存在の看過される条件なのだ。

「それは君の言った、根拠の話になる。高猿」

しかし、高猿の指摘に戸部は動じなかった。

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