PiPi's World 投稿小説

Dandelion
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 13
 15
の最後へ

Dandelion 15

眼を閉じて、眠っているようにも見える。
神崎は距離をとったまま声をかけた。

「禾女先輩」
「神崎か」

禾女は、ゆっくりと瞼を開いた。半眼のまま彼に視線をよこす。
顔立ちで言えば子供っぽさの残る優面で、さほど威圧的な印象はない。が、少々目つきが切れている。暗く、光のないひとみには、こちらの態度にどんな反応を示すか、予想のつかない不安定感があった。思春期の少年にはありがちなことだ。
間違っても凶器を持たせてはいけないタイプだ、と神崎は常々思っていた。
禾女はおっくうそうに神崎の背後をのぞきこんだ。

「海士田はまだか」
「あいつも来るんですか」
「戸部がそう言ってた」

ぽつり、と禾女はつぶやいた。

「戸部先輩も来てるんですか?」
「中にいる。火嘉と、加須原も」

自らその壁に寄りかかっている会議室を目で示す。
神崎は驚き、眉間に皺を寄せた。
禾女の言った面子は、戸部を除いてそのまま公英会の実行メンバーの全てだった。

「何があるんです、これから」
「さあ。知らね」
「知らないって、」
「知らね。あと」

あきれる神崎を無視して、彼は繰り返した。そして続ける。

「あと、これからじゃない。もう始まってる」

扉越しに、戸部の声が聞こえた。



*****



「全員そろったようだな。議題に入ろうか」
「その前に、一つ聞いておきたいのだけど。戸部くん」

気の強い、はっきりとした女の声が戸部を遮った。
戸部は笑って頷いた。

「どうぞ」
「この会議は、一体どういうつもりで集められたのかしら?正気の沙汰とも思えないわ。この時期に、このメンバーを、一ヶ所に集めようだなんて」

このメンバー、と言いながら、彼女はぐるりと会議机を囲む面々を見回した。
米国文学研究会、RRM、電子工作部、幾島流剣術サークル『縞剣会』…公英会を含め九の団体の代表か、代理の代表格部員が顔をそろえている。

清閑仁高校には普通科の他に五つの学科があり、科によってばらつきはあるものの総合生徒数は二千を優に越える。
自然、部・サークルの数も多く、大会出場を前提としない趣味の団体が大半を占めている。
そのうちの九。
全て、この高校に潜伏する真戒派の末端組織だ。

「この会議を敵対セクトが知ったら、そうね…一網打尽って言葉を知ってる?」

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す