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Dandelion
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Dandelion 14

かつて、その単純な二元的争いののち、ヘゲモニーを獲得したのが封改派だったのだ。
内戦はそれに起因していた。

首都圏を離れた田舎の私立高校とその生徒には、何の関係もないことだ。
特に鈴間市内においては、学校と学生自治会は厳しい中立を条件に組織されていた。真戒派に親しい自治体として、弾圧の対象となることを避けるためだ。
封改派に傾いた他都市に比べても、この決着によって何か動きが起こる可能性は低い。

「…たぶんね」

しかし神崎は、変わらないとは言い切れなかった。

戸部の言葉を思い出したためだ。

『学校を獲る』。

どういう意味なのだろう。
彼にしてみれば封改派よりも、戸部の考えの方が捉えがたかった。



広大な学校敷地の西端に建つ男子寮・御柳梅館は、その名に似合わぬ、鉄筋のそっけない建築だった。
神崎には一人部屋が与えられた。

閑ヶ岳中腹に、ときおりちらちらと光が見える。
鈴間第二要塞のある辺りだ。周辺に高い建物がないため、寮の三階から確認できる。
彼は故意にそこから視線を外し、刀のカモフラージュに使われた遮光ネットを、カーテンレールに吊った。
そして黙々と刀の手入れを終え、ベッドに身を投げ出した。



御柳梅館で迎える最初の朝は、静かに幕を開けた。
食堂で朝食をとり、校舎へ向かう。
談笑する学生たち、部活動の朝練風景、教室にたどり着くと昨日までの日々と同じく、蔓木が笑って挨拶した。
何も変わっていない。不審に思えるほど、穏やかな朝だった。
自治会幹部の失踪は簡潔に処理されていた。
学校内には、掲示によって幹部候補の一人がその座に繰り上がった旨のみ伝えられた。

変わりのない日常の最初のほころびは、火嘉からのメールだった。
内容は、放課後、商業科第一校舎第三会議室まで来い、というものだ。

「…『武装の上』?」

チカチカと点滅する強調文字で書かれた言葉に、彼は首を傾げた。



苦労して刀を持ち出し、教員や自治会に見とがめられないよう、商業科校舎にたどり着いた。
第三会議室は三階の、階段と物置として使われている教室に挟まれた一室だった。正式に専用としている団体はなく、時折生徒のミーティングに使われる。
ドアには貼り紙が貼られていた。
『学園祭部活動・サークル合同企画委員会会議』。

中に複数の人の気配がある。
だが神崎は入室できなかった。ドアの前に陣取る人影があったためだ。

三年の公英会部員、禾女誠治が、刀を抱いてうずくまるように座っていた。

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