新八剣伝 4
かつて我が家がこんなにも恋しいと思ったことは、真一にはなかった。
帰宅してからは普段通りの生活をすませ、現在真一は自室のベットに寝転がっている。
刀は刹那が姿を消すと元の赤い玉に戻り、精霊はあれから一言も喋っていない。
(こっちは聞きたいことだらけだというのに…)
おかげで悶々として寝るに寝れない真一は、今日最後のつもりで、再度こちらからのコミュニケーションを試みた。
「おいっ」
『何だ』
呆気ない成功に拍子が抜けた。
『…人を呼んでおいてだんまりか。随分と勝手だな』
「い、いや…散々話しかけても反応がなかったから…」
何故か言い訳がましくなる真一。
『…私の体は見ての通り小型で、自立活動には動力の負担が大きすぎる。そのため、自立活動の後はしばし活動停止を余儀なくされるのだ。本来なら“宿主”から供給される動力があるのだが……あの状況では見込めそうになかったのでな』
「動力?」
『“氣”だ。何かを強く念じる時に生まれるもの、とでも言えばいいか』
真一は黙って聞いていた。
『君は殺意ある敵と向かい合った時、その殺意を受け入れてしまったな…』
思い当たる節がある。…いやむしろ図星である。あの時の真一は、始終『死んだ』と思っていた。まだ生きているうちに……である。
『あの時、もし君が自ら“生きたい”あるいは“死にたくない”と強く念じていたら、おそらく刹那を破壊できただろう……』
そうだ。刹那は右腕を失ったとはいえ、まだ活動しているのだ。
今回は成り行きのような形で戦ったが、次はおそらく初めから命を狙ってくる。
そう考えると、寒気がする。
『死にたくないのなら、もう二度と今晩のような事態は繰り返さないことだな』
「…ハイ」
って俺、玉に説教されてる…?
『今日はもう休むといい。心身とも疲れているだろう』
「ハイ」
玉に気遣われている…?
情けねー…。
こうして、これまでの人生で最も熱い夜は終わった。
目覚まし時計がなる
また朝が来た
僕にとっては憂鬱で疎ましいものだ。
親はいない
特に欲しくもない
僕が学校について一番最初に確認する事
それは上履きの中になにが入っているかだ
酷い時は金魚の死体が入っていた
「…?……石?」
底には自棄に黒いそして艶のある球形の物が入っていた
その玉のものようなものをよくみると更に黒い字で何か書いてあった
「…陰……」
『ありがとよぉ!くそ坊主ぅ!』
「!!!!!」
そして僕は意識を無くした