新八剣伝 3
「お、おい!アンタ精霊なんだろ!?なんとかしてくれよ!」
『ふむ……手がない訳ではないが……』
「さぁ、それを見せてくれよ…」
男はすぐそこまで迫っていた。
「おい、どうすんだよっ!!」
『……仕方がない。いずれはしなければいけないことだしな。』
精霊は話した。
『その赤い玉を強く握りしめてみろ。そうすればお前に力をかしてくれるだろう。お前はこれからその力で戦うことになるのだ。』
「わけわかんねぇよ…」
真一はそう言いながらも、自分が戦わないといけない状態にあることを悟った。
「くそっ、やってやるよ!」
真一は玉を握りしめた。
そして次の瞬間、真一の体が強く輝いたかと思うと、真一の手には一本の刀があった。
!!
…なんだこれは
形は日本刀のような形をしている。しかし普通の刀ではないことは真一にも感じることができた。
「ちぃっ…奴め、もう完成させやがったのか…!」
吐き捨てるような台詞が『影』から漏れた。同時にそれまでの歩くような速度から、一気に加速する。
「うわっ!!」
恐怖で思わず目を背ける真一。
次の瞬間、金属がぶつかり合う音と共に、強い衝撃が刀から伝わった。
目を向けると、自らの持つ刀が『影』の小刀と鍔競っている。
『敵から目を逸らすな!』
刀と化した『精霊』からの叱咤が飛ぶ。
月の光を浴びたそれは、妖しげにギラギラと殺気を放っているように見えた。
「シッ!」
『影』の第二撃が真一を襲う。
またしても真一を介さずに刀が動く。
刀が降り懸かる刃をいなすと、『影』の体勢がわずかに流れた。
一閃。
真一の持つ刀は、『影』の右腕を肩から切り落とした。
鮮血はない。ただ鋭く切られた回路のようなモノが、切り口から見て取れた。
一瞬の静寂。
『影』が大きく飛びずさった。
「…俺の名は刹那。いずれまた会うだろうから教えといてやるよ…」
そう言って奇妙な笑い声を残すと、深い闇の中に溶けて消えた。
「な…なんだったんだ…?」
束の間とはいえ、死線を越え、体中が脱力する真一。その場に座り込んでしまった。