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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 10

「……ぁ、撃ちたいなぁ……不審船でも来れば撃てるのになぁ」
一応護衛任務とあって市ヶ谷から銃器携行許可書を貰っており、船内での使用を想定してFN−P90とFNファイブセブンNを携帯。更にアンチマテリアルライフルも持ち込んでいる……マガジン数個でプレジャーボートなぞ木端微塵にする事も可能なのだ。



「……っ、来てしまった」
数日後、海案山子から一番近い海水浴場に理香はため息をつく。海開きしたとは言え日本海……閑散としている。
「ほら、大学生らしく楽しみましょう」
「零菜さん」
これまでの事を知っているから彼女なりに無理をしているだろう……理香はふと思う。
「で……どうして早朝に?」
「お爺様がかわいがったお弟子さんの作品があるのですよ」
零菜が視線を向けると農業用トラクターが何か車両を牽引しておりその後には綺麗な砂浜が出来ていた。牽引されている機材はビーチクリーナーと呼ばれる砂浜専用の清掃機材である。
「トラクターを遠隔操作」
「いいえ、完全自動」
「!!!!」
農作業用汎用トラクターを農地以外でAIで動かす、農地には幾多のシグナルポールと呼ばれる信号で完全に制御されているがここにはない。
「先進技術特区……主に過疎が酷い所を実験場にする」
「日下部さん」
「よっ、天才少女……休みか?」
「ええ……新型潜水艇はすこぶる順調、後は解析を兼ねて整備しているからね」
「何より……そちらのお嬢さんは、ああ……君か半島でカルト教団教祖を砕いた」
「!!!!」
「彼はファントムガーディアンでもあるのよ、安心して」
理香は納得して言う。
「私も足を狙ったわよ」
「……何、ガーディアンもあの男が生きては困る」
「単に私が貧乏くじって言う事?」
「そうとも言える、ガーディアンが足を止める為に逃走経路に何発か打ちこんでしまい、イレギュラーな動きになり……頭部にヒット、まっアンチマテリアルライフルを使う時点で誰がくじを引くのかは……」
「……楽しそうね」
ファントムガーディアンは秘密に包まれた組織であり、軍学校出身なら誰もが知っている組織名……何故なら普通の学園を装っているからだ。
「君は優秀過ぎる上に出身でキャリアになる資格は無い、孤児とは極亜半島国出身だ」
「……」
「だが君はあちらの言葉を知らない」
「ええ、保護された時は絶命した母親に抱かれていたそうよ」
理香の言葉に日下部も分かる、咲の戦争で経済封鎖され韓国政府の意地の張り合いに巻き込まれた国民の多くが困窮し餓死者も出た。遂にはクーデターで反日思想者は容赦なく処刑された。その最中に理香は保護された……アパートの一室で救助に来た米軍士官らにより、家族揃って死亡と言うケースも珍しくない。
「在日出身者の末路は悲惨そのもの、君の母親も餓死に追い込まれた。そんな反日思想を啓蒙するカルト教教祖を殺してしまえと言う気持ちも分かるがね」
日下部はトラクターの方へと向かう際に耳打ちする。
「楠瀬准尉、また忙しくなるぞ」
「あら、また有事?」
「ガーディアンで事足りるレベルでは無いからな……」
彼もまた偽りの姿で今を生きているのだ。

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