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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 1

海……地球の表面積七割〜八割を占める“水”の集合体。宇宙に置いてこれ程の量を持ち幾多の種を産み出したのは奇跡に近いとも言える。人類は海と共に文明を発達させたとも言える……が、それは表面の海上を単に行き来したのに過ぎない。人間は水中で自然に呼吸する事が出来ない、やがて科学の力により時間制限があるとは言え水中での活動が可能になり、自然災害及び環境保全対策やらで海底に長期間に渡る観測や研究に乗り出す事になる。国家やら企業やらの思惑が蠢く事を知りながらも科学者と技師は己の腕前を示すのだ。



「……ウチは相変わらず沿岸海域ですか、教授……」
「深海はリスクが高すぎるわい、隣国の半島国家なぞ遂に三桁の犠牲を出しそうになったわ!!」
自動車も全自動運転装置が標準装備になった昨今でも運転席にてマニュアル操作する男は助手席に座る初老の男と会話する。彼は電子タブレットで新聞を見て荒げるも悲しげになる。




「(相も変わらず国家もろくな人材がいないのぉ)」
教授は極亜半島国で産れるも両親は日本連邦共和国出身者で所謂“祖国帰還民”である。歴史上の因縁から極亜は暴走しており技量を知らずに日本連邦共和国と同じ分野でより一歩先に進む傾向がある……無論ダメになる事も多く国民からも犠牲者が出る。先の朝日海底トンネル工事も天井崩落し最悪の犠牲者を出し遺体の多くが回収不可能に……幼い子を遺して養護施設に預けられ苦学の末に大学を卒業した。しかし日本人の血があるとやらで差別を受けており、遂には家族そろって亡命をはたす

日本連邦共和国政府は無暗に亡命者を受け入れている訳でもない……使える人材を選別して国籍を与えたのだ。教授は幸いにも日本連邦共和国に両親が日本国籍を保持していた過去や自身の留学した経験と学力やら論文を買われ亡命が認められた事になっているが所詮は政治パフォーマンスに過ぎない。
「まっ、お主もこんな碌でもない教授に仕えていいのか?」
「……またまた、碌でもないと言う割には可也のスポンサー候補が集まってますね」
「ふん……あわよければ横取りする気じゃのぉ、ほれ大陸企業と言っても成り金ばかりじゃぁ!」
教授は昼間と言うのにカップ酒を呑むが気にしない、彼にとってアルコールは精神安定剤だ。
「大陸企業も安定している所もありますがね……香港や広東辺りでしょう、後は数年後に消えている様な所ですね」
「用心しておけよ」
「心得てますよ……」
男はため息をつく。かつて中国と呼ばれアジアの大国とも呼ばれたかの国は共産党独裁政権が祟り遂に沖縄侵攻の暴挙に出るも日本連邦共和国海軍総旗艦“飛鳥”が出現、改いせ型航空護衛艦とイージス艦による防衛戦は肥大化した中国海軍の艦艇を海の藻屑にした。更に軍事協定を結んでいたフランスと英国により開戦と同時に中国系企業の資産凍結と空母打撃群の展開により中国は内戦状態に陥ったのである。結果的には中国共産党は北東部周辺まで国土を遺せず他の国土は新たな国家領土になったのである。大陸企業でも中国共産党を支援する所は数年で消える……汚職摘発で。
「例の装置は?」
「問題はありません……」
教授は残り少ない人生でも研究に没頭するのは極亜半島共和国に改名した祖国に見返す為だ。
その国は大韓民国とも呼ばれていたが余りの迷走ぶりにより終焉を迎えつつある……どんどん優秀な人材が移民し、代わりに中国大陸で行き場を失った中国人が押し寄せているからだ。そしてあわや三桁の犠牲者を出しそうになった計画こそ海底都市だ……完成して数時間で些細な水漏れから亀裂が広がり浸水。犠牲者が一桁に留まったのは奇跡ともいえる。
「恒久的に海底で暮らすのは至難の業じゃな……」
水圧は予想以上に人工構造物の設計を難しくする。教授が沿岸海域に拘っているのは訓練をせずに普通に暮らすとなると今の製造や建材ではここが限度とも言える。

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