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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 7

最も衰退していると騒いでいるのは旧態依然の支援者であり“新華人共和国”と“中央亜細亜共和国”は反共産主義者が殆どである。その軋轢は酷く各競技の国際大会でも露骨に出る事も……この分だと北京共産党は次の五輪から消えるだろう……。
「さて、学生らも起こしておけ」
張教授の言葉に助手は云う。
「すでに起きてますよ」
いつの間にか学生らは起きている、助手の言葉に供御飯も潮も何時もながらびっくりする。
「またミリタリーレーションかぁ」
「仕方ないでしょ、プラットホームじゃ調理スペースすらないからねぇ」
海上プラットホームは極力火を使わないようにしている、食事問題を解決したのが米軍のレーション……改良型UGR−Eと呼ばれる品物だ。一見すると段ボールだが箱を開けると中央にセルフヒーティングシステムと呼ばれる食塩水を利用した化学反応で高熱を発する一回ぽっきりの加温システムがある、被さる形でデザート、スターチ(デンプンの事で米やオートミール、マッシュポテト等を指す)、野菜、メインと其々トレイに入っており、人数分の個人用トレイにスプーンと香辛料各種、嗜好品とスナック菓子、ドリンクパックがセットされている。これは厨房を持たないプレジャーボートを母船にする作業員ダイバーにとってありがたい……。
「新作出たんだしあちらの会社もガチで本腰入れてきたわねぇ」
メニュー表を見た女学生は嬉しそうに言う、まあそれも事実で製造を請け負う会社も日本支社機能を拡張したらしい。

メニュー次第では災害時に備えての自治体や企業向けの非常食にもなりえるからだ。紙製トレイは使い捨てだがリサイクルを徹すればいいだけの話だし何よりも節水が実現出来るのも一つのセールスポイントになる。とは言え日本軍は自衛隊時代から野外炊飯システムがあるのでそう簡単に牙城が崩せるか……とは言えこの先どうなるか分からない隣国が複数あるなら導入もやむなしだろう……。

これは日本だけではなく国境を接するA.S.E.A.N.加盟国も言える……日本はインフラとその安定性には定評があるので日本に工場が出来てもおかしくないレベルだ。
「今回はダイバー向けの試作品だって」
「試作って……一体どこから」
「ほら、ウチは食べ盛りが多いから色々と試せるのよ……営業マンも“現地雇用”するぐらいよ。本国のビジネスマンがするよりは効率的ね」
「ガチかよ」
確かに日本語を話せるアメリカ人を探すのも大変だ……学生らは思わず同情する。



三基の海上プラットホームは“海上試験基地群”と言う正式名称があるが通称“海案山子”とも呼ばれている。最大の目的は海底基地の実証実験である。さまざまな形状や材質を試しているのだ。
人間が住む実際のスケールモデルの安全性実証には年中無休の観測体制が不可欠だ。船舶だと関連法律上制約があるがこの様な建造物なら制約が無い……形状面は円柱型が安定しているが問題は大きさだ。生活インフラ全てを納めるとなると可也の大きさになる上にメンテナンス性も考えないといけない、今現在は潜水艦乗務員並みの不便性を強いられる事になり、人材が限られる訳だ。
「お爺様は気楽ねぇ」
「……貴方もよくこんな装置を……」
張 零菜は張教授の孫でその隣は御目付役の楠瀬 理香。そして二人が居るのは海案山子の下部にあるウォーターアクセスフロア……即ち人為的な浅瀬である。

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