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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 5

男は目の前にある海中ドロイドにあるリングにワイヤーを引っ掛け、海中ドロイドにもなる海中スクーターで海面へと上がる。
「よし終わったな……」
引き揚げた後に後は沖合まで移動し極亜共和国に拠点がある海運会社の貨物船に行けば仕事は終了だ。プレジャーボート後部に海中ドロイドを載せた瞬間、警告音が鳴り響く……。
「防犯装置?無意味なモノを……」
プレジャーボート後部は海面近くまでアクセス出来る様に成っているのが主流だ……船上に居た仲間がヤレヤレと言う感で覗き込んだ瞬間……閃光と衝撃が襲い爆発し、引き揚げた作業員ダイバーは海中に潜りこんだ。
「(そうかバッテリーを火薬かわりに……)」
浸水が起きたらしくプレジャーボートが沈みこんでくる……作業員ダイバーは引きずり込まれない様に機材を捨て泳ぎはじめた。相棒は先に船上に居て爆風を喰らったらしく姿が見えない……夜間の海に投げ出された彼は覚悟を決めた。
深夜の海に漂流する事は死に直結する……ドライスーツであってもだ。プレジャーボートは炎上しつつも沈没が進みつつある……仲間達は付近に居たのか爆風を直撃した可能性は捨てきれない。浮輪が浮遊しておりとりあえずこれを確保する。プレジャーボートでも小型に部類されるので救命いかだは搭載されてない……普通は。
「ちっ……自爆装置付きとは」
男は苦々しく呟く、耳鳴りがする。あんな大音響を至近距離で聞けば当然だ。
「早いな」
サーチライトが複数見えた……海上プラットホームか補助支援港から火柱が見えたのだろう。
「とりあえず降参だな」
極亜本土人の彼は亡命も考え始めた。

“取引材料”は乏しいがこの国も人材不足なので潜水士のライセンス保持者なら優遇はしてくれるだろう。
「(他の連中は運がなかったな)」
爆風を至近距離正面から受ければ助からない。
「(さてどうなるかな?)」
警備艇を見るとしっかりとアサルトライフルを構えている船員が……海軍の方か、男は手を上げる。




「そうか自爆したか」
早朝、教授は未明の内に起きた事を助手から知らされた。
「海保や海軍にはセーフティコードを提示してますので、極亜人と言う事です。被害はプレジャーボート一隻が沈没……ただし違法係留されていた物が勝手に使用されたと言う事で……」




表向きは被害者と言うよりは加害者だ……所有者は今頃蒼褪めている、と言うのも海難事故は自動車の交通事故以上に厄介この上なく更に違法係留となると治水面での障害にもなるので盗難事件として見るべきじゃない。
「沈没と言っても着底はせずにフロートで舳先が浮かんでいるので」
「海万事屋の出番か」
海万事屋(うみばんじや)とはサルベージ業者の通称であり海上プラットホーム事業に伴い支援港に営業所を設けている。海難救助から海中及び海上作業各種まで行う民間企業である……双胴船で半水機能で喫水線を下げられ、揚陸艇と小型潜水作業艇搭載した小型多目的船を使う。
「まっ、プレジャーボートは損傷具合から見て廃船するよりも工業高校の教材になる公算ですね」
呆れる助手の言葉に教授は笑う。持ち主が違法係留する位のプレジャーボートは手放す事が多く、競売に出すよりも公共機関で廃船になるまで使い倒すからだ。
それ故に使用できる海域は限られるがまだ扱いが楽な2馬力ボートや水上バイクを選ぶユーザーはある意味では賢明な判断だ。
「今日もいそがしくなるの」
「はい」
二人は淡々と会話をする。


一台の大型貨物セミトレーラートラックが保久崎浦漁港に隣接する補助支援港に入る。
「おはようございます……IDを」
「ほい」
ドライバーは予め運転免許や書類をバインダーにまとめており係員が眼を通し、スキャンニングマシンで本物と認識する。
「大丈夫です……張教授様のお荷物ですね。新型潜水作業艇にドロイドに……大変ですね」
大型セミトレーラー荷台一杯でも少量になる。
「ゼミの学生さんは?」
「あちらですよ……真夜中に来て寝てますが」
漁港故に夜明け前から稼働するので食堂も時には簡易宿泊になる。

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