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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 3

海中ドロイドとは簡単に言えば遠隔操作及び自動操縦の潜航作業艇の事だ……人間では空気や水圧や海水温との関係でどうしても作業時間が限られ海中ドロイドも遠隔操作で出来る作業は限られる現状であるが人間を潜らせる回数を減らすのは必須とも言える。それに母船方式だと沿岸域では航路の関係上停船が難しい場合もあるので海底に沈める方式を取っているのだ。張教授は海中ドロイド研究のパイオニアで早くからこの方式に着目していた一人であるのだが……普通なら東京や欧米の大学や研究機関に在籍してもおかしくない実績を持っているが在籍しているのは東北地方にある工業大だ。
「教授もたまには学会の公演とか応じたらどうですか?」
「んなもん、他の連中のほうがウケがよいじゃ!わしは動画の方が気が楽出のぉ」
張教授は変人である事は確かな事だ。
「で……作動状況は?」
「エラー表示ですね。やはり引き揚げて貰いましょう」
端末を見た張教授もヤレヤレと思うがゼミの連中には良い課題になる……程無くして海中ドロイドが引き揚げられた。



「……と言う事です。」
漁港にて馴染みの運送業者に連絡する助手の国枝 聡太はハンズフリーモードで会話をしていた。
『いきなりだなぁ……そこの漁港なら支援港よりは面倒くさくないからいいけどなぁ』
「急なお願いで申し訳ありません、では」
颯太はため息交じりにスマホを操作する。
「申請を済ませておきましょう」
会話中に出て来た支援港とは三基の海上プラットホームが要する機材や作業員や技師を織り込む施設で国際航路貨物船数隻が接岸し荷降ろし可能な港湾施設と倉庫及びコンテナヤードに専用連絡船の乗り場を備えている。セキュリティの要であり貨物の出入りに口にはX線装置すらあるし作業員も技師も出入りする際には電子マネー機能付専用IDが必須である。運送業者が嫌っているのは一時利用者である運送業者が使える施設が限られる上に待たされる……それに比べて保久崎浦漁港に併設する保久崎浦補助支援港は接岸できる船舶が限られるが少数の作業員やそれほど大きくない機材搬入や搬出にはもってこいである。漁港とは言え養殖関連で可也大型トラックが出入りしているので問題は無い。
この様な補助支援港が設ける理由は支援港の負担軽減もあるが周辺自治体への経済効果だ。保久崎浦漁港を初め周辺の漁港にも補助支援港機能を設けており、漁船でも作業員ダイバーへの母船として活用できるのは補助支援港がある漁港に所属する船舶のみである。無論守秘義務が生じるが港湾設備の更新に補助がすんなり通ったと思えば応じる他は無い。漁協に申請すればいいのだ。


「はい……まいどあり、いやはや張教授には感謝してますよ」
顔馴染みの漁協職員はにこやかにハンコを押した書類を渡した。
「いえいえ、機材が小さいですから……」
張教授は先程の作業員ダイバーらと併設している食堂にてプチ酒宴状態だ。作業員ダイバーは厳密に作業時間が決められており、余程の緊急事態でない限りは長時間連続潜水は禁止されている。
海中は真夏でも身体を冷やす……水圧の影響もあるので負担が予想以上にかかる。故に漁協に併設されているこの食堂は常に作業員ダイバーらでにぎわっているのも頷ける。食用には問題がないが市場に流通出来ない海鮮食材を使っているだけにリーズナブルであるが味は保証出来る。酒も持ち込み可能と言う気前の良さもよい。
「教授、申請は通りました」
「うむ……宿もとっておるじゃろ?」
「はい」
張教授はスケジュールを確認する……昔ながらのアナログ手帳の表紙はボロボロだが今は亡き父親が軍役を終えた日に貰ったモノだ。工学教授を目指して奮戦した時も……日本に亡命する事を決意し工作員と連絡を取り合った時にも活躍した。
「工房の方は数時間後に輸送用大型トレーラートラックが入ります」
「そうか……学生の何人かはてがあいておるのかぉ?」
「何時のも面子になりますが」

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