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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 14

小規模ながらもそれなりに繁盛しているのはそれだけ日本にはこの様な場所が少ないと言う事もあるが水上バイクやプレジャーボート以外に“二馬力ボート”の利用が多いのも要因の一つだ、二馬力ボートとは船舶免許を必要としない船舶であり主に釣りを趣味にする人が行き着く先の一つ……無論使用できる海域がどの船舶よりも狭くなるがトレーラーを要しないサイズが主流であるので増えつつある。
「この分だと今月も黒字と……海案山子周辺の人工漁礁様々だ」
管理事務所にて社長は上機嫌だ。
潮の流れかそれとも漁場として成功しているのだろう……二馬力ボートから本格的なボートオーナーの口コミで広がって居る事が予想外の収益を生んでいる。
「社長さんジョウキゲンネ」
決裁書類を提出する社員は舌足らずの日本語を話しているが母親は大陸からの政治思想亡命者であるらしい……日本人の父親を持ち日本国籍を持つ。
「うむ……だが些細な事であっという間に赤字になるのもこの業界だ……楊君、現場の方はどうかね?」
「モンダイナイネ……外国人観光客向けのパッケージ、コウヒョウアルネ」
「……そうか、きめ細かい対応をするしかないな」
社長は何処か危機感を感じていた。
出来る限り英語情報を提供するしかない、無論常時新しく情報になるとスマホを初めとするモバイル機材に限定される……アナログ面になるとコストも考えないといけない、頭が痛い問題で観光客の事前知識に頼るしかない。
「今日も暑くなるな」
社長は空を見上げた。


海水浴場はにぎわいを見せていた、日本海とも言え夏の海には変わりはない。
「湘南じゃないのかぉよぉ」
「昨年出入り禁止って通知受けた事覚えてませんか、今やドロイドやらドローンの認知機能もバカに出来ない。神楽なんて先週ソッコーで追い出され……ゴネたらあれ警察のブタ箱(=留置場)で一泊で色々と面倒な事になっているよ、今頃も……」
如何にも遊び人の若いヤンチャな男が不貞腐れた表情で目の前の海を見るが隣に居る真面目な雰囲気の男はピックアップトラックに積んである折り畳みテントを広げる。キャンプサイドを予約しておいて正解だ。
「それにここは海洋開発の最前線に近いからな」
「女が居ない所でどうやってエンジョイするんふぁよ」
既に缶ビールを数本開けているのでハンドルロックをしておこう……。
テントは地面に下して使うのではなく車載した状態で使うタイプで海外では広く普及している。地面から梯子を使う程高くはなるが急激な冠水とか避けられる可能性がある……細いワイヤーを数本入れ、キッチン部分にある日除けを展開……不貞腐れている男は新たな缶ビールを開ける。
「なあ、ここにするのか?」
「湘南に行った神楽……先生から停学か追加レポートを選択されたそうですよ、出席日数ギリギリな所で停学なら留年確定ですからね……貴方も」
「うぅぅ……きついょ!柳瀬っ」
昨年の夏、自分が居なかったら神楽や隣に居る緑柳も退学になっていただろう。柳瀬 将はため息をつく……従兄がこの様じゃそりゃあ養護施設に預けた自分を引き取る……本当に祖父母らの感覚に呆れるのだが父親も必死になって許しを乞う為に色々としてきたのだ。

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