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フロンティアはディープオーシャン
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フロンティアはディープオーシャン 13

だが船を陸に揚げるにはプレジャーボートでも一騒ぎでボートトレーラーを牽引する車両がスタックする事もある……五年前には県外の水上バイク愛好家グループが波打ち際でスタックを起こし三原らが駆け付けた時には牽引車が半分海水浸かり、砂浜整備の為に待機していた作業員らが建機を動かして救出、その後は車載車に載せられてこの町を後にした。後日所轄署にお礼に訪れた時には廃車になった事が分かったと言う……そんな時に消防が注目したのが自力で揚陸出来るプレジャーボートの存在である。輸入代理店も海案山子の事は知っているらしく数年の交渉の末に地元消防局に導入、今年はライフセーバーにも試験導入する事になる。



これには海水浴客の救助のみならず海案山子の大規模海難事案も想定しており港で無くても揚陸出来るのはある意味ではアドバンテージがある、揚陸装置である電動駆動輪ユニットは船首に一つに船尾に二つある。水中での抵抗をなくすために海面から出す状態で航行する事になる。
「太平洋辺りは結構煩くなってきてますから増えると思いますよ、昔の同僚が何人か出入り禁止にしたって言ってましたから」
「なるほどね」
リストを渡された三原は察した、要は警察で対応を要する事になる。



程無くして夏の日差しになり、張教授の知り合いらと合流する。
大学や企業に属するが何れもドローンやドロイド研究開発を生業にしている方々と護衛任務をする軍の士官らである。士官らは一般人を装っているので一目では分からないし家族連れしている人もいる……。
「楠瀬准尉、槇軍曹以下十名到着しました」
「はい、一日ですが護衛任務をよろしくお願いします。既婚者は万が一の時は家族を優先に、警察は通常体制です」
「はっ!」
敬礼は避けたのはこの様な護衛任務に限ってことだ。
「では楠瀬さん、楽しみましょう」
「はい」
槇はこの様な任務は派遣先で慣れているのか直ぐに言葉を切り替える。

今回の任務もそうだが仕方ない、妻も元は軍人であるので選抜されたのだろう……とは言え幕僚二部からは監視対象組織や人物は抑え込むと言う確約を得ているので半ば休暇でもあるし、子供らも二人を知っている。
「お姉さん達に迷惑かけたらダメよ」
「「はいっ!!」」
榊の息子二人はやんちゃ盛りであるが余程妻の躾けが行き届いているのだろう、問題を起こした事は無い。零菜も理香と共に他の隊員の子供達と遊び始める。
「貴方、早速仕事しているわよ」
妻が榊にオペラグラスを投げ渡す。そして見渡すと陸幕二部らしきの隊員らが一般人を装って警戒、恐らくアサルトライフルの携帯を許可されているのだろう。こっちはハンドガンのみなのでそれなりの配慮だろう……。



海水浴場とは河川を挟んで反対側にあるのが水上バイク及びプレジャーボート専用施設であるマリーナであり係留、陸上保管施設にボートを積み下ろし用の斜路を備える。

一応民間と自治体による共同運営、所謂“第三セクター”である……それ故にやたら建造物を増やすとコケた時の損害が大きくなる。何よりも初期投資を抑えたい、張教授の友人でもある建築学を専門とする教授らが提案したのが海上コンテナを使ったビルである。海上コンテナにもISO規格があり”船にて10個重ねてもビクともしない頑丈さ”の基準の一つであり、使用して12年経過すれば異常が無くても使用を止める事が義務付けられる。それが新興国でも発展途上国でも先進国でも……これまでは廃棄されていたがこれを建材として活用できないか、日本にて立ちはだかったのが建築基準法である。これまでは仮設なら問題が無かったが恒久的に使うと場合によっては非合法で撤去を命じられる事もあった、これには地震の多さも影響がある。だが近年の経済情勢と人材不足、そして大規模風水害被災地の住宅供給問題を解決するには国も認めざる得なかった……無論大学や建築会社も垣根を越えて研究開発を進め、国に働きかけたからこそ実現した。結果マリーナに見えるがコンテナヤードと勘違いして時折間違う運送業者も出るがラウンドマークとしては上出来だ。

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