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TRADEAD
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TRADEAD 6


何も解決しないまま、放課後になった。

「真哉ぁ〜、昼休みどうだったんだよ?」
ぼーっとしている俺に遠慮してか、諒平は放課後になるまで話しかけてこなかった。

諒平はこの世界の存在なんだよな…
一度死んでいる俺とは違う。

こうして考えてみると、自分だけが取り残された気分になる。

すべてが幻想。
諒平も、クラスメートも、名前が覚えられない担任も。

すぐ隣で笑っている人が、プログラム通りに動いているだけで、意志を持っているのは自分だけ。
そんな錯覚に陥ってしまう。
「悪い。体調が優れないんだ。その話、今度でいいか?」
そんな嘘を吐くのが精一杯だった。

「風邪か?大事にしろよ!」
そんな気遣いも…
俺は真実がわからなくなっていた。
「あぁ、ありがとう。」
自分の気持ちでさえ、あやふやなモノでしかない。
おぼつかない足取りで、帰路を急ぐ。


…元から、そうだったのかも知れない。
いい顔してれば損はしない。
そんな損得勘定でしか生きられない。

そこに、気持ちが介入する隙は存在しない。

自然と、涙が出てきた。
俺は今まで何の為に生きてきたんだ?
答えが見つからないまま帰宅し、食事する気にもなれないまま、部屋に閉じこもった。

こんなもやもやした気持ちで悩んでいてもしょうがない。
まずは状況を整理しよう。

俺の体は昏睡状態で、体が生き返るには、この世界で見る夢の中で何かをしなければならない。

しかし体が死んでも、この世界で生きていく事は出来る。

前者なら片桐先輩は恐らく死ぬ。
後者なら俺の体と片桐先輩の心が死ぬ。


偽善かも知れないが、自分が関わった人には死んで欲しくない。
一度は助けようとした人だしな。
まぁ、生きる事の意味を見失った俺が言うのもおかしな話だが。

助けられるならば、助けたい。


まずは夢を見なければ始まらない。

考えるのはそれからだ。
前みたいに忘れて無ければいいが…

そんな事を考えつつ、眠りについた。




(ここは…どこだ?)

さっきまで夜だったのに、やけに明るい。
(…学校?)
見慣れた風景。
そうだ、ここは学校だ。

うまく動かない体、意思とは無関係な言動。

自分が勝手に動き出す。

どうやら"俺"は屋上に行くらしい。
屋上に続く階段。
屋上の手前の扉。

ここで俺はおかしな事に気付いた。
今日行った時には間違いなく立入禁止の貼り紙があった。
(どういうことだ?)

扉を開けて理解した。
柵がひどく錆びている。

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