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TRADEAD
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TRADEAD 5


「つまり俺はこの世界で生きていけと?」
「うーん…それも出来るし、何かの拍子に元の世界に戻れるかも知れないって言ってたよ。」
無茶苦茶だな。
「戻ったら二人になるんじゃないのか?」
「もし戻れたら、の話だけど、高見君が落ちなかった場合の未来になるはず」
よくわからない。
「でも俺は落ちてるんだよね?」
「うん…。でもこの世界で高見君が見る夢が鍵だって言ってたよ?」

夢?あの覚えていない夢が鍵?
「夢なんて覚えてない」
「覚えてなくてもいいの。落ちる時の夢を見てるはずだから、どうしたいのかを夢の中で体験して、決めて欲しいんだって」

ちょっと待て。
「じゃあ片桐先輩が落ちる可能性もあるのか?」
「そうだよ。でもあたしの事は気にしないで。死ぬつもりだったんだし」
その理由が気になるが、聞ける雰囲気じゃない。
「片桐先輩の命と交換か、俺が死ぬか。そういう事?」
「そうなると思うよ。あたしのせいで、本当にごめんね…」
まったくだ。
助けようとして落ちた俺も馬鹿だが。
「いつまで決めればいいんだ?」
「…わからないの。時期が来ればわかる筈とは言っていたけど。」
「わかった、早めに決めておくことにするよ」
まだ混乱してはいるが、ある程度は理解できた。

弁当の残りを平らげる。「いままでの話、信じなくてもいいからね?」
いきなり何を言い出すんだ?
しかもちょっと泣いてるし。
「信じ…なかっ、たら、ここでっ、幸せに暮らせっ、るから…」
泣いている時点で信じるなと言う方が無理だ。
「その場合、先輩はどうなるんだ?」
…ハトが豆鉄砲食らった。まさにそんな顔を片桐先輩はしていた。
「えっ?と…心は死んでるも同然だし、迷惑で無ければ、巻き込んでしまった償いをさせてもらいたいな…」

「償いって…言われてもなぁ…」
「何でもするから!こんな事になっちゃって申し訳ないの…」
腑に落ちない。
助かった事は喜ぶべきじゃないのか?
そんな負い目を感じられたら、かえって迷惑だ。
「この世界へは、どーやって来たんだ?」
少し冷静になってくると、疑問が浮かんできた。
「本当はすごくややこしいんだけど、夢の中に入り込んでるって感じかな。」
つまりこの人は寝てんのか。
俺も人の事は言えないが。
しかし何だか変な感じだ。
昨日まで確かに俺は存在していたはずなのに、今は存在自体が否定されている。

だめだ。やはりまだ冷静になりきれていない。
「しばらく、一人にしてくれないか?」
「うん…落ち着いたらいつでも来て。あたしはずっとここにいるから。」
それはいかん。風邪でもひかれたら困る。
いや、体は寝ているからいいのだろうか?

まぁ、今は他人の心配をするほどの精神的余裕は俺に無い。
また今度にしよう。



午後からの授業は、昨日以上に勉学に勤しんだ。
声は右から左に。
文字は暗号に見えたが。

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