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TRADEAD
その他リレー小説 - ファンタジー

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TRADEAD 25

ダメだ。今、どういう状況なのか把握しなくては。

俺だけを置いて、『なにか』が変わってしまう。
どうしてこんなに、焦りだけがこころを占めているのだろう。

それなのに思うように見えない世界は俺を置いて『動いて』いる。それだけがわかる。
ここがどこなのか、それどころか自分が立っているのか座っているのか、横になっているのかすらわからない。


───『目を覚ませ』
声、ではない。自分の意識なのか、それとも誰かの意識なのか。
信号のようなそれは脳に直撃するかのように浮かび上がる。



その瞬間。



ぐわん、と振り落とされるような眩暈と共に、大量に流れ込む音と映像。
まるで他人事のように、それらを見ている自分がいる。
見えているのに、聞こえているのに、それらは認識ができない。

(痛っ…)
(なんだっけ…、どこか、高いところから落ちて、それで。それで……?)
(白い天井。数人の人。話しかけているのは、俺、に…?)
でも何て言ってるのかわからない。
とりあえず、何かしら返事をすれば少しは安心してもらえるんじゃないかという単純思考が過ぎる。
───快便だ。と言いたいところだが。
いや、それは違うか。
──いつもすまないねぇ。
もっと違う。
─きっと白馬の王子様が!
どこの乙女だ。

だから、そうじゃなくて。
俺は、心の中で、ぶんぶんと頭を振った。
たぶんここは病院で、どっちの世界かはわからないが、どちらにしても落下による怪我で入院していると考えるのが妥当だろう。
体も動かないし。できるのは…、まばたきくらいだ。
少しずつ意識がはっきりしてきて、体の感覚がないことがわかる。



ふわふわ、ふわふわ。



無重力って、体験したことないけど、こんな感じかなぁー。
なんだか落ち着いてきたぞ。さっきまでの焦燥感が嘘みたいだ。
そうだ、焦ってもしょうがない。今できることを考えなくては。
とはいっても、体は動かないし、うーん…。
今のところは、とにかく回復を待つのが一番だという結論に達した。
ああ…、なんだか急に…、
「あまい…の…たべたい…、あんみつ……まっちゃぱうだーと…しらたま…だんごが……」




「ちょっと! いつまで惚けているつもりなのよ、このボウヤは!!」

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