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TRADEAD
その他リレー小説 - ファンタジー

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TRADEAD 19

…自分から話振っておいて話題変えるとは。
諒平のマイペースぶりには脱帽だ。

残念ながら帽子は被ってないが。

「どの漢字だよ」
「この字なんだけどさ」

俺は、差し出された本に心理学と書いてあった事に驚きを隠せない。
「あ、あのさ諒平、漢字の前に、何で心理学なわけ?」
驚きの余り、俺はスムーズに話せなくなってしまった様だ。
「ん?夢がどうとか言ってたから、これは心理学しかないだろう」


どうやら諒平は、夢の話から夢診断、心理学と考えていったらしい。
何にせよ、本を読むのは良い事じゃないか、そう結論付けた。
ゴボウの事で頭が一杯な奴の思考回路について考えても仕方無いので、読めない漢字を見てみる事にした。




「かなりの強者だな。俺の手に負える相手では無い」
「読めないって素直に言えよ」
なかなか鋭いなコイツ。
「俺より頼りになる奴が居るじゃないか」
そう言いながらソクラテス野上を指差す。

「そうか!何で真哉に聞いたんだろう俺は」
…気になる発言を倒置法で残し、諒平は野上広孝の方へ歩いて行った。



しかし勉強熱心な諒平を見ていると、天変地異の前触れな気がしてならないのは何故だろうか。
心理学の本なのに、日本語に困ってみたりしている様だからまだ大丈夫だとは思うが。


俺も読めなかった漢字について少し気になったので、聞き耳を立ててみる事にした。


「これは黎明期だ」
「れいめいき?」
「物事が発展途上の期間、またはその状態を指す」
「そうなのか…俺がすごい無知な気がしてきた」
「無知の知は大事だ。恥じる事ではない」
「無知の知?」
本家ソクラテスの名言を持ち出すとは野上も粋な奴だ。
…思わず吹き出してしまった。
「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い。真の知への探求は、まず自分が無知であることを知ることから始まる。そんな意味だ」

「つまり俺は今、天才へのスタート地点に立ったという事か」
凄まじい思考回路だな。
尊敬するよ。
「あ、いや、まぁ、そう考えても良いだろうな」

あのソクラテスすらたじたじにさせる諒平は、すでにある意味天才であると言えよう。
ここで、諒平の暴走を止める救世主が現れた。

おなじみの点呼野郎だが、良いタイミングだ。




午前の授業を難なくこなし、ゴボウの守護の為に、昼休みは猛スピードで屋上へと逃げ込んだ。


…あまりの慌てっぷりに、屋上に居た片桐先輩に怪訝な表情で迎えられたが、ゴボウの為なら背に腹は変えられない。


「ど、どうしたの?そんなに急いで…」
そんなに俺の行動が気になるのか、この燃料調達係がぁー!!

むしろ、気になるって事は恋?
これは恋なのね?

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