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TRADEAD
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TRADEAD 15

「太田さんのお知り合いの方ですか?」
片桐先輩が少し安心した様子で言った。

…少し思い出してきた。
確か、そうだ。
この世界の事を片桐先輩に聞いた時、太田さんから言われた、と言っていたはずだ。

「そうですよ。片桐さん」

しかしどう見ても社会人の出で立ちだ。
どうやって屋上まで来たんだろうか。
「ここへは、どうやって入ったんですか?」
「あぁ、僕の名前がしゅうりなので、門真宗吏と名乗ったら屋上の柵の修理業者だと思われまして、案外簡単に入れましたよ。」
なるほど。
学校側の早合点が原因か。
しかしこう簡単に入れてはセキュリティ面でどうなのだろうか。

「早速ですが、高見君。夢で何か変わった事はありませんでしたか?」

何故この人は、そんな事までわかるのだろうか。
やはり燃料目当て?

いや、初対面だし、普通なら不信感で一杯だが、何故かこの人は信用出来る気がした。

「今日見た夢では、聞こえないはずの片桐先輩の声が聞こえて、それから自分の意思で動けるようになって、自分は落ちなかったけど片桐先輩を助けられませんでした。」
「その夢は最後まで見てないですよね?」
間髪入れずに門真さんが言った。
「はい、見たくなかったので…」
「それなら良かったです。最後まで見ると、それが現実になってしまう可能性があります。」

何だって!?
そういう事はもっと早く言ってくれ。
「良かったのに…それが正しい未来だったのに…」
ふいに片桐先輩が言った言葉に俺はイラついた。

「俺は片桐先輩が死ぬなんて許さない。当然俺も死ぬ気はない!」
思わず考えていた事が口をついて出てしまった。
きつい言い方だった所為か、片桐先輩は少し涙ぐんでいる。

「僕と高見君が同じ考えで良かったです。しかし声が聞こえたから動けたという認識は誤っていますね。」

「え?」
「実はですね、アナザー、いえ、今居る世界をミラー、高見君が入院している世界をアナザーと僕達は呼称しているのですが、そのアナザーで片桐さんには麻酔と説明しましたが、実際は僕の血液を高見君に輸血したんです。」

声が出なくなった原因はこの人の血液?
どれだけ相性が悪かったのだろうか。
「ただ、僕の体は少し特殊なので、血液型が同じでも、拒否反応を起こしてしまうみたいなんです。その代わり一時的に普段と違う事が出来たりします。」

何だか納得いかないが、あの夢で動けるようになったのだから信じざるを得ない。
「じゃあ、声が聞こえたのは何でですか」
「恐らく、アナザーで片桐さんが高見君に話しかけていたのが、輸血直後の拒否反応によってリンクして、たまたま聞こえたのではないかと思いますよ。」

「夢の中で、また現実世界の声が聞こえるかはわからないけど、自由に動けるのは間違い無いんですか?」

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