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TRADEAD
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TRADEAD 14


…空耳だ、と無理矢理押し切って屋上へ逃げ込む。


慣れてきたとは言え、ここは立入禁止だ。
チキンと言われても仕方ない挙動不審さで階段を昇る。



よし。
誰にもバレてない。
午前中の睡眠よりバレてない筈だ。

扉を開ける時に結構大きな音が出て驚いた。


俺は大層チキンだったようだ。


…良かった。
生きていた。


そうだ。俺は何よりも片桐先輩がいなくなっていないか不安だったのだ。
夢とは言え、俺が体験したものだ。
しかも普通の夢とは違う。
何があっても不思議ではない。

「…どうしたの?あっ!声、出るようになった?」

「…おかげ様で。」
夢のおかげで声が出るようになったと言っても過言ではない衝撃はあったからな。

「え?あたし何にもしてないよ?」
オイオイ。この人は天才か?
いや天然の才能って意味だが。
何も言葉通りに解釈しなくても良いだろう。

「いえ、声が出なくなった理由、教えて貰ったんで。」
当たり障りの無い事を言っておいた。
ナイス機転、俺。
先輩は納得してない様子だったが。
あぁもう!

これだから天才は困る。


「あの…夢は、どうだったの?」
そういえば昨日話せなかったな。
「昨日の夢は、どうして俺が落ちたのかをトレースしてました。」
途端に複雑な表情になる先輩。
「あ、でもあれは俺がアホな事で落ちただけですから」
我ながらよくわからんフォローだ。

「そんなことないよ!…本当は、すごい嬉しかったし…」
え?余りにも唐突な流れであやうくゴボウを落としそうになった。
「どうしてですか?」

「あの、ね。あたし、父親からちょっと虐待っぽいのを受けてて、死んでも誰も悲しまないんじゃないかって思ってたの」
ディープな話だ。
ある意味今日の夢よりも衝撃だ。
「それでね、こんなあたしでも身を挺して助けてくれる人がいるんだなぁって思って、すごく嬉しかった…」

そんな事情関係なしに目の前に落ちそうな人が居たら助けるだろう。

…まさか自分が落ちるとは思わなかったが。


「死んでも何も解決しませんよ」
よく考えてみたら、片桐先輩が死にたい理由をどうにかしなければ、二人とも助かるのは無理だ。
「…うん。」
そんな事を考えていると、屋上の扉が開いた。

…怒られる!
片桐先輩もびっくりして扉の方を凝視していた。
「こんにちは。」


は?
「はじめまして、だね。高見君と片桐さん、かな?」
「はっはい!」
勢いで返事してしまったが、否定しても良かったと思う。
「はは…そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。僕は門真宗吏、太田さんに言われて様子を見に来たんです。」

太田…?
聞いた事がある気はするが思い出せない。

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