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TRADEAD
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TRADEAD 11

逃げる!俺は逃げるぞ!目を覚ませばこの苦しみから逃れられる。
 
(止めろ!これが最後のチャンスだったらどうする!)
「あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
 
俺の上にあるのは布団。ゼエゼエ聞こえるのは俺の呼吸音。ここは俺の部屋……現実世界だ。叫び過ぎて喉が痛い。
 
―ポタッ
 
!?…水?
……涙か。俺は今、泣いているのか。
 
暫くして、涙が止んだ。落ち着いてみると、全てが夢だった気がする(いや夢なんだが)。
しかし、再び眠りにつく勇気は無い。また、明日学校に行ける自信も無い。
とにかく全身が無味無臭の恐怖に浸かっている感じだ。

…夢の中と言えども、俺は何という選択をしてしまったんだ。

目の前に助けられる人がいるのに。

見殺しに。してしまった…


俺はこんな人間だったのか。
「胸クソ悪い…」

やはり片桐先輩が死ぬのは見たくない。
だが、俺が死ぬのも本意ではない。


時計を見る。3時か。

気分転換にラジオをつけ、俺は誰も死なない方法を考える事にした。
それにしても、喉が渇いた。
あれだけ泣き叫んだら当たり前か。

冷蔵庫から烏龍茶を取り出し、コップに注いだ。

ラジオからは、放送が今月で終わる事を惜しむメールが読み上げられていた。


コップを持ち、一気に流し込んだ。

そう言えば、気が動転していて気付かなかったが、声が出るようになっている。
…まだ喉の痛みは残るが。
二人共助かる方法はあるのか無いのか分からないが、きっとあると思っておこう。
恐らく、夢の中で先輩を助けに戻らず屋上を去れば、俺が助かるらしい。逆に、先輩を助けて俺が落ち……いや待て。
先輩を助ける時に、俺が落ちなければいいんじゃないのか?
駄目か。先輩が飛び降りる直前まで俺の行動は“俺”に支配されていた。先輩の声が無いとそのままだっただろう。
 
……ん?
 
あの声は、何だ?先輩は俺の夢が分かるのか?
突然湧いた疑問は、これまで気付かなかった疑問まで掘り起こす。

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