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フリークスバスター
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フリークスバスター 10

「気をつけろ。蓬莱の実で剄が非実体化しておる」

剃髪の男が鉄混を振り下ろす。土砂の土煙の中から見えない何かが鳩尾に叩き込まれ、吹き飛ばされて側にあった岩に叩きつけられる。昼に食ったばかりの飯を吐き出しながら、すぐに地面を転がる。今までいた地点に鉄混が叩き込まれ、クレーターが作られた。
そのまま相手に切り込もうとする時、鉄混の先に異様な陽炎が漂い、大鎌のように変化するのが見えた。その切っ先が胸元へと迫るのを辛うじてまた転がることで交わし、陽炎に触れた地面が裂ける。そのまま転がっている俺へと迫る見えない刃を硝子の剣に走らせる剄で受け止め、しかし、続く鉄棍に身体をきりもみしながら吹き飛ばされる。
吹き飛ばされながらも内功のうちの一つ、軽功で着地し、横薙ぎで迫り来る発剄の軌道をそのままもう一つ飛ぶことで躱す。背後で大木の峰がへし折れ、倒れる轟音が響くのを聞いた。聞いたが動きは止まらない。
軽功のままに再び鉄の元へと潜り込み、今度は重功―地盤功によって足場を万全にし、そして右の刀に最大の外剄―刃剄を載せて走らせる。

「ウオオオオッ!」

渾身の刺突が相手の臓腑――脇腹の中に潜り込み、両肺を貫く。
剄使いにとって肺とは心臓よりも生き死にを判断する重要な器官。口や鼻を塞がれるよりも呼吸を止める。
剃髪の男の全身から立ち昇る【気流】の勢いが消え、俺は両腕の筋肉や折れた骨が激痛を上げるのを無視して肺に突き刺した氷刀を横に引き裂く。胸骨を切り裂かれて血を噴出しながら剃髪の男は崩れ落ちた。

力を使ったことで完璧の両腕がイカレた。
氷刀が砕け、全身の気を使い果たして地面に座り込む。
全身の痛みに呻き、傷口から血が流れ始める。

「まさか、蓬莱の実を食わせて負けるとは思いませんでした」
「妾の勝ちだな」

なんでお前の勝ちなんだよ、と言いたいが酷使された身体は剄で抑えていた分の疲労やら痛みやらで動きどころか声すらもままならない。そんな俺を無視して二人――二匹の神獣たちは対話を続ける。

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