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フリークスバスター
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フリークスバスター 8

轟々と生物のように唸る炎を完璧に制御する咒制御力。
その≪火≫を見るだけでわかる。先程一撃、彼にとってただの牽制でしかなかったのだ。防がれてもおかしくない一撃。しかし、あの一撃を人間が紡ぐにはどれだけの時間を、人生を消費しないと出来ないか。人間には出来ぬことを容易にする存在を、人は神や悪魔と呼ぶ。

「いらぬ恩恵じゃな。それと前々から思っておったがお前の冗談はくだらぬ」
「そうでしょうね。相手に伺いを立てるような立場になったことはありませんし、なりたいとも思えません。仕方ありませんね。説得は無理でしたと黒姫様に言っておきます」
「来るか?」

麒麟の周囲を踊る雷蛇の牙が一斉に男を睨みつける。彼は苦笑しながら顎鬚を撫でた。髭を伸ばしていることからかなり歳を食ってるのかと思ったが、顔立ちは結構若い。

「いいや。来ません。僕に命じられたのはこの村の殲滅であり壊滅。幸いなことに貴方への殺戮は命じられてませんから」
「吻。だからお前は鼠なのだ。鳳凰すら噛み砕ける力を無駄に使いおって」
「買い被りですよ。僕はただの飲兵衛ですから」

男は微笑を浮かべ、地面で膝をつく剃髪の男を見る。

「立てるか、黒鉄?」
「・・・無理ですね。腹をやられました。今、血は頸で抑えてますが・・」
「死ぬか」
「ええ、ですからアレを下さい。ガキに舐められたままじゃ死に切れません」

剃髪の男の双眸がギラギラと殺意を持ってリーフォルを睨みつける。殺意ではなく憎悪にも似た感情の奔流に彼の背筋が泡立ち、またリーフォルの憎悪の炎も弾ける。

「上等だ」

リーフォルは激痛を堪えながら呼吸を必死に整え、頸で痛みを出来る限り沈痛させる。それでも死にそうになる痛みから気絶しかける痛みに変わった程度だが、多少はましだ。火鼠は嘆息した後、懐から一粒の木の実を取り出し黒鉄の口の中に放り投げる。ガリッと奥歯で噛み砕いた瞬間、男の全身から気が増大した。本来物理的な圧力などない気が地面に落ちた、木の葉を揺らし家々に絡みつく炎を揺らがせる。

黒鉄の腹に突き刺さった氷の刃。その端からダクダクと血が流れながらも黒鉄は立ち上がる。全身の皮膚から汗が湯気となって立ち昇り、手に握る戦棒が軋む。黒鉄は軽く戦棒を振るった瞬間、切っ先は消え、とんでもない気圧と豪風がはじけた。

「蓬莱の樹の実か。そやつ死ぬぞ」
「本人の意思です。私たちが口を出すことではありません」

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