フリークスバスター 12
生物の血や肉を沸騰させる電気の嵐の中を切り裂いて火鼠は、麒麟の少女へと掌を向けた。紅の炎も宿ってない掌の前で空気が歪む。その瞬間、麒麟の少女の体が物凄い勢いで吹き飛ばされ、背後にあった木々に叩きつけられる。
「くっ、熱膨張かっ!」
「衝撃波などは使えませんから」
跳ね起きようとした麒麟の少女の眼前で再び、陽炎を宿した掌で向けられ、至近距離で熱膨張によって膨れ上がった空気の砲弾が叩き込まれた。水蒸気の爆発と轟音が響き、土煙を上げながら崩れ落ちる麒麟。
がくり、と力尽きたように倒れる麒麟から目をそらし、火鼠は地面に倒れるリーフォルを見た。
「さてとお姫様はこれでいいとして・・・」
「・・・・・・・・くぉぉ」
体の痛みを必死に無視して気脈を整え、咒を紡ごうとするが度重なる体の酷使に加え、これほどの咒を連覇したことで神経が悲鳴を上げる。痛いのか、熱いのか、冷たいのか、吹き上がる汗の質さえもわからないまま、唇を噛み締め、情け無いうめき声をもらさないように、火鼠を睨みつける。
「君は・・・中々面白い。僕が雇ってあげよう。黒鉄の跡を継ぐつもりは無いかい?」
「だ、・・・・れ・・・がっ」
「そうか。それは残念」
火鼠は右手に巨大な炎の塊を生み出す。轟々と暴れまわるそれは、触れて無くても熱波だけで人を容易に殺すことが出来る代物で、けれど、俺にはもう既に何が熱いのか、さえわからない。
痛みの無いまま死ぬのか・・・そりゃ楽だな・・・・・・・・・・。
これでおわるのかと想ったら、自然と瞼が落ちてくる。
出血をしすぎなのか、それとも死ぬことで何かもがどうでもよくなったのか。それはわからない。
ただ、リーフォルの意識は、暗闇の中に落ちていく。
※※※※※※※≪第三章・讐途探旅≫※※※※※※※※※※
「おい、いい加減、起きろ」
ぺちぺちと頬を叩く痛み。いや、ほとんど傷みはないが、何度も叩かれるとうざったい。
「・・・・・・・なんだ?」
「ようやく起きたか、馬鹿もん」
瞼を開けると、燦燦と降り注ぐ陽光と、それに負けない黄金の髪を靡かせる少女がいた。その姿を見た瞬間、気絶する前のことを思い出し、氷刀(ソルド)の咒を生成、辺りを見回す。
「奴はどこだ!?」
「とっとと帰ったぞ。おそらく天帝宮じゃろうな」
「・・・・・・・・・・そうか」