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暗殺少女
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暗殺少女 10

第四話『地縛靈の恋路や如何に 前編』

「素質……ねぇ」

景はうんざり気味の呟きをもらし眼下に広がる校庭をぐるりと見回した。
景が座っているのは某高校の屋上の給水タンクの上だった。
思い出したように脚を組み替え、景は再び校庭を――正しくは校庭で体育の授業に勤しむ生徒一人ひとりを――観察し始めた。

景は前日同業者である儚に言われた『勿体ない』と言う言葉を未だに引きずっていた。

「どうやって見分けるのかな」

呟いた所で更に儚の『分かる奴に聞くしか』という言葉を思い出す。

なら勿体ないとか仕方無いだろう。
景はそんなことを思いながら校庭の生徒を見下ろす。

高校生というのは、悪霊になりやすい年頃というのは良く知っていた。

つまり中学生は悪霊へと足を踏み入れることに迷う時期であり、飛んで大学生ともなると確固たる自分を持つ者が増える。
間の高校生は一番危険な存在ということだ。

いや、飽くまで一般論に過ぎないのだが……

「ん?」

一人ひとり目ざとく視認していた景は生徒に混じって『変なモノ』がいることに気が付いた。
それは一見、体育に勤しむ女子生徒に見える。が、周りの女子生徒がハーフパンツなのに対し、その女子生徒は今や懐しきブルマなのである。

「珍しい。地縛霊か」

談笑しながら怠そうに走っている女子生徒に混じって真面目に走っている彼女は、恐らく学校で命を落としたか何だかした存在だった。
前時代的な長い黒髪を揺らす彼女は確かに古めかしい雰囲気がある。

「死神になれるのは人だけで無く霊も、という話だが……」

景は呟き、しばらく彼女を眺めていた。
そして、ふむと頷くと、
「素質とやらを確かめる良い機会やもしれんな」
そう笑って言った。



「おい地縛霊」
「ひゃわう!?」

放課後。景は地縛霊の後ろから声を掛けた。
しかしその反応は相当なもので、猫のように毛を逆立てた彼女は瞬時に振り返って距離を取る。正に猫だった。

「いや、そう驚くな。ただのジャッジメンターだ」
「ジャッジメンター……?」
色白の肌が青白くなったのを見て、景はこいつもしかして悪霊か? と思ったが、そのまま動向を見守ることにした。
地縛霊は固った状態からハッと我に返り、
「え、い、嫌ですよぉ。私は地縛霊なんかじゃなくて人間ですよぉ」
と言うので景は腰に携えてあった刀を抜き、地縛霊に突き付けた。
尋問開始だ。
「黙れ地縛霊」
「ひ、ひぃいぃぃ。嘘つきました、嘘つきました、ごめんなさい、許して下さい」
尋問終了だ。
認めるの早いな、と景は思いつつ、てこずるかと思われたファーストコンタクトは割りとあっさりカタがついた。

彼女の名前は櫛津靈(くしづ たま)。
15年モノの地縛霊で、そのほとんどを架空の学校生活にあてているらしい。

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