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暗殺少女
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暗殺少女 11

魂そのものは一月で悪霊になるのが通例だが、靈からは悪霊の気というものが微塵も無かった。
裏があるのか無いのか。それでも景は顔色を変えないように努めて言葉を進めた。
「しかし今日一日お前の行動を観察していたが、何故体育だけ真面目に受けている?」
景が観察したところ、靈は体育以外の授業は全て寝ているのだ。
席が無いからと思いきや、特別教室に移っても余った席に座って寝ているのだ。
「そ……それはほら、健全な魂は健全な肉体に宿るって言うじゃないですか」
という言い分も突っ込み所が少なく無くて……
「そもそも肉体が無いと思うのだが」
「え……?」
慌てて自分の体を見下ろす靈。
透けた自分を数秒見下ろし、靈は顔を赤くして後ろ頭をかいた。
「そ、そうでしたぁ!」
「……大丈夫か?」
何か目も当てられない状況に落ち掛ける景。
「しかしなぁ」

間が抜けていようと魂は魂。

魂というものは人間と違って肉体では無く霊体をまとって生きるわけだから、素質の面では人間よりも可能性があるのでは無いか、

というのが景の見解だった。

「な、なんですか見詰めちゃって。私のこと、好きになっちゃいましたか?」
何が嬉しいのか、きゃぴきゃぴとはしゃぐ靈を無視する。
素質云々も含め、あとで儚あたりに聞けば良いだろうと景は思った。
そして景は改めて靈の方に向き直る。
「どうかしたんですか?」
「ああ、靈に死神予備生の素質があるかどうか調べたくてな」
「へっ?」
靈が死神予備生という言葉に反応する。
景は靈がその存在を知っているものだと勘違いした。
「知っているなら話は早い。強制では無いし、不足しているというわけでもないが、いて損なことは無いからな」
「それは紹介した人が得するタイプですか?」
「どこの宗教だ、どこの」

だが、靈は難色を示さず、考えておくと笑って言った。

「ところでお前」
「靈ですよ」
「靈。何でこの学校に地縛している?」

「……」

靈が黙ったのは本当に一瞬だった。
だがその一瞬が景にとって、終わりまでの引っ掛かりとなるのだった。

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