暗殺少女 7
「あーあ、勿体無い」
「……!」
咄嗟に身構える景。
「まだその癖……直らないんですか……?」
いつの間にやら、景と同じく髪の白い少女が二人いる。闇から湧き出たかという印象すら受ける。
特に後に喋った方は、何処までが体で何処からが闇かも判然としない有様だった。
「常在戦場だ……それより勿体無いとは?」
「儚(ハカナ)に聞きなよ」
暗闇少女の名前は儚というらしい。
「さっきの霊……“あれ”の素質があった……」
「“あれ”って何だ?」
「……へ?」
「だから“あれ”って何?」
「景お前……一体何年ジャッジメンターやってるんだよ」
「知らん。多分四百年かそこらだろう」
「それで未だに知らないって……何?」
冷静そうな景もカチンときた様だ。
「うるさい。なら幽(ユウ)は何年目で知ったんだ」
「契約した次の日に、死神から説明を受けたよ!」
「ならこうなる。私は聞いてない。知らん理由はそれだけだ」
「……」
「あの……説明を……」
儚が幽の袖を引っ張っている。
「分かったよ……“あれ”っていうのは、言わば死神予備生って奴だ」
「死神予備生?」
聞き慣れぬ単語に、鸚鵡返しをしてしまう景。
「死神だって不滅じゃない。それで新しい死神を、人間及び霊から抜擢する訳だ……が」
「が、何だ」
「……予備生は色々あってややこしいんだよな、儚」
「どうややこしいんだ」
「それは……えっと……失敗して悪霊になったり、死神擬きになったり……えー」
「……死神とは別格の不可思議な存在になったり」
「そうそう、本当に色々あり過ぎて説明は難しいんだ……とにかく予備生から普通の死神になるのは半分にも満たない」
「素質があるかどうかはどうやって見分ける?」
「それはもう、分かる奴に聞くしか」
二人の視線を浴びて俯く儚。
「で、用事はさっきの霊だけか」
「うん、まあ……という訳であたしらは帰る」
「ちょっと待て」
「何?」
「会う度に言っている気がするが、二人共少しは休め。顔色が悪いぞ」
確かに属性は違うが二人共不健康そうだ。幽が不養生、儚は病弱といったイメージがある。
「今回ばかりはお互い様だ。何日ぶっ通しでさっきの奴を追ってたんだ?」
正直ここまで上手く逃げる霊は久しぶりだった。最後に寝たのはいつだったか。
「一週間!」