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暗殺少女
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暗殺少女 20

「ここからが本題だ」

死神は馬から下りた。

「被害をあれだけに止められたのは景、そなたの働きのお陰だ。我々はその功績と能力を買い、ここ“この世では無い場所”への自由な出入りを許可すると共に、上位の死神と同等の権力を与える。分かり易く言えばそなたは私と同じ立場になったのだ」
「……」
「どうした?そう言えばまだ死神に上下関係がある事を教えてなかったか。私の様にジャッジメンターを従え、あまり魂狩りに行かないのが上位、魂狩りが専門なのが下位だ。そして……」
「違います」
「ん?」
「私のような日陰者がそんなに目立つのは……」
「心配するな。こういった例は珍しくない」
「はい……」

景はどうも乗り気ではないが、既に決定した事項らしい。死神の態度がそう言っていた。
そして……

「出口ができるよう念じてみろ」
「……」

空間が裂け、ここに来る前に居た場所に繋がる。

もう力は持っていた。


第7話『一』


S市市民公園噴水前。
幼児を連れた母親たちがたむろしている。天気のよい平日の午後。

景は一人立ちつくしていた。
ほんの数秒前まで、ここに標的がいたのだ。だが、彼女の襲撃を察知したかのように、その霊は姿を消した。

「くそ、またか」

まだ周辺に潜んではいないかと、鯉口にかけていた指を離す。
逃げられたのだ。


今回が初めてではなかった。

逢坂一は悪性腫瘍を患い、短い入院生活の末、一週間前に亡くなった。享年三十二歳。
無念だったことだろう。病死や自然死した者が悪霊化する例はまれだが、彼の場合は覚悟までの時間が少なすぎた。
逢坂一は死神の迎えから逃げたのだ。
景は彼を追いはじめた。

霊の行動には、大概決まったパターンがある。死を認めずに日常を繰り返そうとするもの、何がしかに執着し自縛するもの。
時間が経つにつれて、パターン化は顕著になる。思考能力が低下するためだ。

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