PiPi's World 投稿小説

暗殺少女
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 15
 17
の最後へ

暗殺少女 17

 
第六話『日陰者』

「久々の大物だな」

ここは所謂『魔のカーブ』で、何も無くとも交通事故が多発する様な場所だった。
通常ならこんなに分かり易い地縛霊はさっさと見付け出されて討たれるのが関の山だが、どうも運良く見付けられなかったらしい。
今その霊は時折通る車を睨んでは事故を起こそうとしている。運転手、若しくは車自体の調子が悪ければすぐに惨事が引き起こされるだろう。
それ程までにその霊は力を付けていた。

「早めに片付けないとな」

ただ霊がどれだけ強かろうが暗殺者たるジャッジメンターには関係は無い。
寧ろ強い悪霊の方が仕留めやすい位だ。何故なら強い悪霊程知能が低いからである。
景も背後から近付き両断するつもりだった。当の悪霊は道路しか目に入っていない。
気配を殺し、そろそろと悪霊に近付く景。緊張している様子は全く見られない。
残り五メートル……

四……

三……

二……

一……

刃が届く位置まで来た。悪霊は景に気付く素振りも見せず、景は玄人らしく一切表情に変化を見せない。

「御迎えに上がりました」

変性した魂が塵となった。
ここで初めて景の表情がやや驚きの色を孕む。

声に反応せず、それどころか斬られても反応が無かったのだ。

「余程車が憎いと見える」

そして驚きは憐憫へと変わる。
しかしだからと言って何をするでもない。魂を失った今も道路から目を離さない霊を背に、景はその場を去った。
……と、景の前方の空間が揺らいだ。
一瞬身構えかけ、すぐに元の姿勢に戻る。
縦に切れ目が入り、そこからぬっと手が伸びる。

「招集だ、景」

切れ目の向こうから声がした。そして手が仕草で「入れ」と示す。
景は小さく頷き、その裂け目に入った。


「何だ、お前がジャッジメンターを連れてくるなんて珍しいな」
「たまにはいいだろうと思ってな」

広い広い薄暗がり。いつか来た“この世ではない場所”だ。
大勢のジャッジメンターが居る。そしてそれらを従える死神も。そう、死神の姿をした死神が。
景の死神は久々のペイルライダーの姿だ。

「特にする事は無い。景は適当に話を聞き流していればいい」
「了解しました」

景は早速村正を取り出し、手入れを始めた。周囲を気にする様子は無い。

「あらら珍しい。景が居る」
「……幽か」
「日本中の死神が集まってる中で、一人のほほんと刀の手入れとは、変わった奴だねえ」
「何処で何をしようが私の勝手だ」
「……連れない奴」

ふとそこで景がある事に気付いた。

「そう言えば儚はどうした?何年か前からいつも一緒に行動していた筈だが」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す