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暗殺少女
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暗殺少女 14


素質のある魂かと思いきや、とんでもないことに巻き込まれたものだ。

景は心の中で独りごちつつ、夜の学校を後にした。


恋愛とは、恐ろしいものである。
特に幽霊のものとなると、そもそも叶わぬものですらある。

生きる世界が違うからだ。
 第五話 『嘘』


ベッドの傍らに設置された心電図は、一定の割合で波を作っている。門外漢の俊晴にも、それが生命の継続を示していることぐらいはわかった。
隔離された病室。そのなかに唯一あるベッドに寝かされた俊晴の息子。身体の至る所からのびたコードが、なにか大きな機械に繋がれている。口には呼吸器が当てられ、目は、眠っているかのように閉じられたままだ。
それでも、息子はまだ生きている。
目を覚ましてほしい、と俊晴は強く願った。そのためならなんでもする。例え死神とでも戦ってやる。
そう――自分はもう、死んでいる身だと知っていようとも。
「秋俊……」
息子の名前が、無意識に唇から零れた。


交通事故だった。
数ヶ月ぶりに俊晴が会社の休みをとることができて、家族旅行に出掛けた帰りだった。俊晴は妻とは離婚していて、親子二人の旅行だった。
小学生になったばかりの秋俊は、まだその日の日中に行った遊園地での興奮が収まらないようで、しきりにはしゃいで俊晴を呼んだ。
「楽しかったねえ! また行こうね!」
そんな我が子の笑顔が愛しくて、俊晴は、ああ、無理して休みを作ってよかったな、と思っていた。
車は高速道路を降りて、一般道に入った。俊晴はハンドルを握りながら、前の交差点の信号を確認した。青信号だったので、俊晴はアクセルを踏みこんだ。
その、一瞬だった。
なにを間違えたのか、交わる道の信号待ちをしていた原付が、突然発進してきたのだ。思わず声を上げ――俊晴はそれに気付いたときには、すでに反射的にハンドルをきっていた。しかし――さっと全身の体温がひいたとき、フロントガラスいっぱいに、大型トラックのライトの光が、あった。俊晴はとっさに助手席を庇おうと自身を投げだし――

そこで、意識は途絶えた。


気がついたら、ここにいた。
不思議と、自分がすでに亡霊と呼ばれるものになっていることはわかるものだった。看護士は自分に気付かないし、鏡に姿も映らない。しかし俊晴はそんなことより、目の前のものにこそ悲観した。
病院のベッドに眠る、秋俊の姿。
息子の顔は、普段の寝顔のように穏やかだ。こんな病室で、こんなチューブが繋がれていなければ、俊晴をどれだけ和ませてくれたであろう。
様々な思い出の中の、秋俊の表情が次々と浮かぶ。

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