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クロノセブンス
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クロノセブンス 14

化け物に向かい走り出したリッディ。
その身を貫かんと迫る体毛と同じ緑の魔手。
避け、切り払い、また避け、また切り払う。
同じ動作を繰り返しリッディの攻撃圏内にようやく入った時、リッディの体はかすり傷やこすれた痕で赤くなっていた。
その体に巨大な顎が襲い掛かる。
顎と前足の連撃にリッディは防戦一方となっていた。
人間相手では百戦錬磨、必勝のリッディでも巨躯の化け物相手は初めてだった。
化け物と戦っていたリッディの脳裏をよぎる思い出があった。
それは思い出と言うのもはばかれるような代物であったが、数少なき父の記憶だった。
リッディの父は毎日のように人殺しの依頼が来ていた。そのため、最短で一日に3つの町を転々とした事があった。
だが、裏の世界では有名人となっていた父が宿などを使うはずも無く父を待つリッディはいつもの町の近くの岩場、森の雨風をしのげる所にいた。
そんなある日である。
いつものように、焚き木の火を消し眠りに付こうと土の上に横になった時だった。
地面に耳を当てたリッディに振動が音となり伝わってきた。
何かが歩いてくる、そんな振動がである。
それも一つではなく何足もの振動であった。
父が帰ってきたのではない。
リッディは瞬時に悟った。
足音が近づくにつれ、音が大きくなる。
それと同時に聞こえてくる息遣い。
それは人間のそれではなく獣のものであった。

何匹もの狼に囲まれ、リッディは恐怖した。暗闇の中、赤い目がじりじりと近付いてくる。 
手元に武器はなく、後ろを振り向くとそこは崖になっていた。父親は助けに来てくれない…
一匹の赤い目が走りだすと、それに続いて他の赤い目も走り出した。危機迫る中、リッディは不思議と時をゆっくり感じられた。
それからどうなったか覚えてない、気付いたら狼の死体に囲まれ、血だらけで座っていた。
しばらくして人の足音が近付いてきた、それは目の前で止まった。リッディが上を見上げると、血だらけの父親がいて、笑っていた。
何故笑ったか分からない…、しかし一つだけ分かった事がある、それは自分と父親は似ているという事だった。それが嫌で家を飛び出し「殺しはやめよう」決めていたが、気付いたらまた殺っている。

「俺、やめられないのかなぁ…」リッディが曲刀を鞘にしまうと、大きな音と共に化け物は倒れた。背中に見える化け物は、アリストラ聖堂に向けて何かを言おうと必死に口を動かしたが、それを終える前に光へと消えた。
その直後に、リッディのポケットにあったライオンハートが熱を帯び始める。リッディは気味悪く思い、それを地面においた。

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