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大光旅伝〜『龍』の章
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大光旅伝〜『龍』の章 6

「な、に!?」

少女が進路に立ち塞がるように現われた。

「うっりゃ!」

少女は間合いの外から剣を振る。すると剣から突風が巻き起こり、大軌を吹き飛ばした。
吹っ飛ばされた大軌は茶屋の壁を突き破って店内に飛び込んだ。

「ああーー! 店があぁぁっ!」

店員さんがまた悲鳴をあげた。
大軌は壁やら椅子やらの破片にまみれながらムックリと起き上がる。

「カッコ悪、キミこそホントに龍漸鏡なの?」
 
少女の言葉に、大軌は首をコキコキ鳴らしながら羽織りについた埃を払うだけで、特別何も反応を示さなかった。
そんな大軌に少々呆れた表情を見せる少女であったが、次の瞬間、それは強張った。

“がっかりだ”

彼は何も言葉を発していない。
だが、それは確かに少女の耳に、と言うより頭の中に確かに響いた。
そう、彼の瞳が、そう物語っていた。
少女の威勢は何処へやら、大軌の内なる“気”に完全に気圧されてしまった。

「…悪いが…」

大軌が口を開く。
少女は思わず身を固くする。

「…やっぱり信じられないな。」
 
少女はムッと身構えるが、大軌は全く意に介す様子もなく少女にゆっくりと近付いてくる。
巨大な壁が押し寄せてくるような圧迫感に、少女は身体を動かす事が出来なくなった。
彼から滲み出る威圧感が、彼女から身体の自由を奪っていたのだ。

「おい町娘。町中で急に刀を振り回して店をブッ壊すのが繋か?無抵抗なのを良い事に人をフッ飛ばして優越感に浸るのが龍天鏡か?」

「…!それ、は…」

「器が小せぇよ。…顔洗って出直して来な。」

何か言いたそうな少女を軽くあしらい、大軌は去っていく。
少女は固く拳を握っている。
少女は大軌の背中を睨み、震える唇を噛み締める。
自分の浅はかさ、そして力の差、何より器の大きさの違いが悔しかった。
もう大分遠くまで歩いた大軌に向かい、少女は叫んだ。

「…ごめんなさい!!」

突然の叫びに周りの人々も驚く。大軌は立ち止まりもせずに歩いて行く。

「待ってよ!何処に行くんだよ!」

少女が半分泣きそうになりながら叫ぶと、大軌は立ち止まり、振り向いた。
先程とは打って変わった穏やかな表情に、少女は思わずハッとする。

「東は割末、光の地だ。」

大軌は羽織りを翻し、再び歩みを進めた。
 
 二人は関をほぼスルーし(両国の友好関係の為)、割末のの中心、些分(さわき)城に到った。
大軌自身、この城に来るのは初めてではなかった。つまり外交上何度も龍光鏡と顔を合わせているが、龍光鏡はこれまで見た事のない位やつれて見えた。
 
「貴公達が何を言いに来たかはもう解っている」
「それでは、光龍の解放をしてくれるのですね」
「いや、もう龍は解放した。然るべき時に光龍は力を貸すだろう…大軌殿、我が国は天龍の力を失った。もはや貴公の国、姫鷲に救いを請うしかない」

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