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大光旅伝〜『龍』の章
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大光旅伝〜『龍』の章 3

世界のバランスを造っているという9つの要素。
この要素を司る龍には、それぞれに繋と呼ばれる者が存在し、その繋が、龍と人間の世界とのバランスを保つ仲立ちとなっているのだ。
龍は世界を護り、人間は生きる事で龍に力を与える。どちらが欠けても、世界は成り立たない。
よって、龍と人間とを繋ぐ者の存在は、人間にとって重要なポジションに置かれる事は必然で、舞国の中に8つある国も、それぞれ繋が治めているのだ。
ここ姫鷲も、心の繋、双魅が治めている。
ここまで聞いて、大軌は大まかな予測を立てるに到った。
 
「つまり、繋の身に何か起きて、世界のバランスが崩れた、と?」

大軌は曇った空を見上げ、言った。双魅は静かに頷き、口を開く。

「若しくは、龍そのものに何か起きたか…。何にせよ、龍も繋も一つ欠けたら世界の調和は保てません。」

「では、この曇り空は…」

「世界の調和が乱れ始めている、と考えた方が良いでしょう。良い、というのもおかしい話ではありますが…」

二人共それ以上は語らず、護るべき国、姫鷲を眺める。もし事態が考えている通りなら、姫鷲を今後更なる危機が襲う事は避けられないだろう。
 
「…大軌様、救いたいですか?世界を。」

双魅がぽつりと呟いた。大軌は不思議そうに双魅を見る。
そしてしばらくの沈黙の後、ゆっくりと頷いた。双魅もそれを見て、微笑みながら頷いた。

「貴方なら出来ます。いえ、貴方にしか出来ません。」

双魅の意外な言葉に、大軌は眉を潜める。
すると、双魅の表情が引き締まり、雰囲気が一変した。そして先程と打って変わった口調で語り始める。

「良いですか、龍漸鏡。繋に会いなさい。全ての繋に会い、龍を解放するのです。そうしなければ対抗出来ません。」
 
「解放…。ん、対抗というのは?」

双魅の言葉の真意を読み取れない大軌。彼の頭は事態を把握し切れず混乱していた。
事が大き過ぎて、今まで世界のバランスなど考えた事もない大軌に、理解しろと言うのも無理な話ではあるのだが…
が、双魅はそんな大軌などお構いなしに話を続ける。

「世界の調和を9つの要素が保っている訳ですが、要素の中には調和を乱すものもあるのです。」

「調和を乱す、要素…?」

「聖と邪です。」

聖と邪。大軌にとっては、初めて耳にする要素だった。大軌にはまだ、話が読めないようである。
 
「聖と邪にも、それを司る龍が居ます。9匹の龍、全ての力にも匹敵する龍が。」

双魅は言い聞かせるように言葉を紡いでいく。その言葉は確実に、大軌に事態を把握させていく。

「しかし、その龍には繋は存在しておらず、龍だけでは世界を脅かすほどの影響を与えるには到りません。…つまり」

「聖と邪の繋が、現れたという事ですか。」

続けようとした双魅の言葉を遮り、大軌が答えた。
彼の顔からは、完全に事態を飲み込んだ緊張感が、しっかりと感じ取れた。

「…考えたくはないですが、恐らくは。」

双魅は目を閉じる。

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