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武竜戦記
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武竜戦記 38

デュランが大きく踏み込んだ。彼の拳は炎をあげながらグルーの頭を潰していく。グルーは焼け焦げ、なんとも言えない悪臭を漂わせて次々と倒れていった。
殴られた衝撃でグルーの黒い体液がが弾け飛び、地面は粘り気のある黒いものに変化していく。ユメは腕を組み遠くからその光景を眺めていた。

「まぁちょっとはやるみたいだけど、十六夜の方が上ね」
誰も聞いていないと分かっていながらも、ユメは目を細めて1人そう言った。デュランの攻撃は素早く、拳の炎が伸びてその背中に赤いマントがついているように彼女には見えていた。

「これでとどめだ!!」
デュランが力一杯地面を殴ると、地面の色が一瞬で赤く染まった。次の瞬間、巨大な炎の柱がグルーを飲み込んでいった。デュランを柱の中心に残したまま。

「何やってるんだ!!おい!!!」
ユメは思わず声を上げたが、炎の中からデュランの返事は聞こえなかった。
炎は徐々に勢いを失っていき、ユメの腰辺りまでの高さになった。すると湯気を上げる地面の上に人影が一つだけ現われた。人影はユメに向かってピースしている。

「…あなたその力、“覇”の将でしょ?」
「将?よく分からないが、俺は“こっち”に来て間もない。無所属だ」
「ふ〜ん、じゃあ私と来て」
「強い奴と戦うのは歓迎だが、他の厄介事はごめんだぞ?」
「あ〜それなら心配しなくてもいいわよ、もう首突っ込んでるから」
「え?」
突っ立っているデュランに背を向けて、ユメは竜尾(リュウビ)を構える。すると地響きをあげて山の大きさはあろう人型グルーが姿を現わした。それを見上げて笑うデュラン。

「へぇ〜、でっかいの出て来たなぁ」
「なんだよ、魔石が爆発したら瀕死の“マスターグルー”が登場するんじゃなかったのかよ!!」
「あのでかいの“マスターグルー”って言うのか?」
「そうよ、この辺にいるグルーは皆アイツから分裂して生まれたゴミみたいなモノなの。アイツと闘う為に魔石まで用意してたのに…」
「じゃあ作戦変更だな」
「変更じゃないわ、破棄よ、破棄。逃げるわよ!!」
ユメはデュランの腕を引っ張ろうとした。力は入れている、でもデュランの腕はピクリとも動かなかった。

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