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武竜戦記
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武竜戦記 37

「なんだ、余裕じゃん…」
柱に手をつき後ろを振り返る、その先の光景を見てユメは思わず笑った。
「でもないか」
ユメの周りを狼グルーが取り囲み、地面はグルーの黒で覆われてほとんど見えなくなっていた。

「ちょっとまずいよ、十六夜ぃ…」
狼グルーの中をユメの3倍はあるであろう大きな人型のグルーが、巨大なハンマーを握って登場した。そのグルーに向けユメは竜尾を振るが、小さな光を灯すだけで、そのまま淡い光は消えてしまった。
「アハハ…、帰る時の魔力と体力もうないかも」
人型グルーはハンマーを振り上げる、その巨体の影にユメはすっかり飲み込まれて、たじろいでいしまっていた。避けるにもその場所はない。

「十六夜!!!」
ユメが諦めかけた時、灼熱の炎が柱の周りにいたグルー達を一瞬にして灰にした。

「遅い!!!」
ユメが涙目で怒鳴る。現われた人物は炎を背景にしていた所為で姿が黒く見えなくなっていたが、彼女はすぐに警戒した。それは彼女の前にいたのが十六夜ではないと直感したからの行動だった。

「あなた誰?」
「俺か?俺の名は“デュラン”、お前は?」
「そうじゃない!!あなた何者?もしかして“覇”の管理者?」
「あー、ちょっと聞きたいんだが、俺最近“こっち”に来たばっかで国の事よく分からねえんだ。助けた礼に教えてくれないか?」
「怪しい…」
「そう言わずに、な?」
「…分かった。その前に仕事をさせてほしい。」
「仕事?」
ユメは無言で頷くと、腰につけた布袋から黄色い玉を取り出した。彼女がそれを両手で握ると玉は光りだす。ユメはそれを柱にくっつけた。

「これで仕事は終わったけど、ここで話をするのはちょっとね…」
ユメが視線を送ったその先には、ヌチャヌチャと音をたてて迫ってくるグルーの群れがあった。デュランは笑顔で返す。

「よっし任せとけ、腕試しにはちょうどいい!!オラアアアアアアア!!!」

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