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武竜戦記
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武竜戦記 36

「俺はあがりだな、さてとユメの様子でも見に行くかな─」
十六夜はベルトに付けた袋から赤い玉を取り出すと、直ぐさまそれをしまい竜刀で防御の構えをつくった。その瞬間、彼の目の前に黒い翼と眼球をもつ天使が現われ、竜刀に剣を振りおろした。
二つの刃はぶつかりあったまま断続的に青い光をバチバチと発した。光りが発せられる度に天使の不気味な顔が十六夜の目にやきついていった。
「チッ天使グルーかよ」
十六夜は天使の剣を払いのけると左手を無防備な天使の腹に向けた。

「灰になれ!!」
十六夜がそう叫ぶと彼の左手で灼熱の炎が渦巻き、一瞬で天使を飲み込む。黒き天使は赤い炎の玉に閉じ込められ、奇声をあげたまま灰へと姿を変えていった。

「何だ…、嫌な予感がする、…ユメ!!」


「ん?十六夜?」
ユメは十六夜の声が聞こえた気がした、彼女は後ろを振り向く。だがその先にあったのは、地面に転がるグルーの屍だけで、十六夜の姿はなかった。

「…なんだ、私を心配して駆けつけて来たのかと思ったじゃないか」
ユメはそう呟くと舌打ちした。彼女の進む先には勿論例の柱があるのだが、なかなかそこに辿り着けないでいた。柱を囲む狼グルーの群れ、それが彼女の行く道を阻んでいるのだ。
襲いかかる狼グルー。それに対してユメは拳程の大きさの丸い形状をした“竜尾”という武器を振って反撃した。
竜尾が振られる度にそこから発生した三本の光の曲線がグルーの体を貫いていく。
一匹一匹確実に敵の数は減っている。だが、その量の多さ故にユメは敵数が減っているようには感じられずにいた。

「…時間が足りない、突っ切るしかないか」
ユメは額に人差し指を当て目を閉じる。次に彼女が目を開けた時、その瞳は赤い光をはなっていた。
「私の邪魔をするな!!!」
グルーの群れに向かって走り出すユメ。グルー達も彼女に向かって一斉に走り出すが、グルーが襲いかかる前にユメはその横を素早い動きで通り過ぎていった。

「32、31、30秒…、柱までもって!!」
グルーの群れの中を赤い光の線がただ進んでいく。そしてそれが柱の下に行き着くと、ボロボロになったユメの姿がそこに現われた。

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