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武竜戦記
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武竜戦記 30

「クッ」
チェスはジンの竜剣の柄を蹴り上げると、青い球体の中に吸い込まれて消えた。残されたジンもその後を追いかけるように球体に吸い込まれていった。
吸い込まれた先は洞窟にそびえる宮殿だった。宮殿には竜人文字がいくつも刻まれている。洞窟の天井にあいた穴から太陽の光がさし、日の光の先にチェスの姿が現われた。

「あの身のこなし…、“風竜”の加護をうけていたか」
チェスが考えにふけっていると、ジンも遺跡の影から姿を現わした。
「普段は温厚な奴なんだがね、闇竜が関わってるとなると話は別なのさ」
「何を一人でブツブツ言っている?もしや…。その呪文、唱え終わる前にお前の命を終わらせてやる」
「呪文だぁ?できるものならやってみな」
ドフンッ。チェスが挑発すると、ジンの足下から突風が吹き荒れる。その際発生した土煙がチェスの視界を遮った。

「もらった」
土煙を切り裂いてジンが斬りかかる、竜剣は無防備なチェスを完璧にとらえていた。だが刃がチェスに当たる前に竜剣は止まった。第三者の剣により。

「エンペラーイレブンで一番力が強いのは僕だ、“月竜”だって僕には敵わない。それでもやるかい?ジンくん」
ジンの剣を止めたのは鉄の鎧をまとった腕の細い少女だった。ジンは両腕で力一杯剣を振り下ろそうとするが、彼女の剣は微動だとせず、それどころか彼女はずっと笑っている。

「邪魔を、するな!!!」
「ダメダメ、闇竜の呪いをかけられた人をほっとける訳ないだろ?」
少女はジンの剣を軽々と弾くと笑顔で彼の頬に平手打ちを食らわせた。回転しながら吹っ飛んでいくジンを見てチェスは目を点にする。

「“地竜”よ、ちとやり過ぎじゃないか?」
「闇竜の呪いだとしたら、血のマントを身に着けてるはずだからダメージはあんまりないよ」
「間違えだったら…、死んどるな」
チェスが宙を舞うジンを見ていると、彼は急に空中で停止してゆっくりと地面に降りたつ。ジンの背中にはいつの間にやら深紅のマントがひろげられていた。

「普通、血のマントは目に見えないモノなんだけど、僕の洗礼が効いたみたいだね」
「地竜は物知りだねぇ」
「うん、僕、闇竜嫌いだから。さて、次はどうくるかな?」
ジンはマントを翻すと、竜剣を構え突風を巻起こし、再び姿を消す。地竜はチェスを抱き寄せると剣を地面に突き刺した。

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