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武竜戦記
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武竜戦記 29

暫く人込みの中を歩くと、二人は木の上にある不思議な家に辿り着く。球状のその家はまるで木の一部のようにして存在していた。二人は入口からのびる鉄の梯子を上っていく。

「“チェス”いるかあ?」
「うるさい奴だ、私になんの用だい!!」
ガルが入口で声をだすと、老婆の声が返ってきた。家の中には青く光る球体が宙に浮いているだけで他にはなにもなかった。

「水竜仕留めそこねちまったぜ、ニヒヒィ」
「バカ者!!“エンペラーイレブン”に手を出すなとあれ程忠告しただろうが!!」
ガルが青い球体に話し続けると、突然そこからピコピコハンマーを握った老婆が飛び出して来た。老婆はハンマーを振り上げると、おもいっきりガルの頭を叩いた。

「ウゲッ!!」
ハンマーは「ピコっ」と音をたててガルを床に叩き付けた。

「イテテ、エンペラーイレブン倒したら財宝の3割は約束するって言ってんだろうが、何が不満だコノ野郎」
「あんたはいつになったら言葉使いがまともになるんだろうねぇ」
「おい、聞いてんのかババア!!」
プチッ、ジンにはそんな感じの音が聞こえた気がした。そしてその音がした時には既にガルは床の上で気を失っていた。チェス婆さんの握るピコピコハンマーから出ている煙りが、ガルを殴った時の衝撃を物語っている。

「私はチェス。あんた、名前は?」
「ジン。ジン・バルトフェルドです」
「バルトフェルド?ほぉもしかして“レイオ”の息子かい?そうだとしたら、わざわざ竜谷から下界までご苦労なこったな」
「父さんを知っているんですか!?」
「ああ知ってるとも、レイオは私の息子だからね」
「…………」
ジンは黙って俯くと竜剣の柄に手を掛け、鞘から少し刃を見せた。ジンの表情が別人のように変わり、その瞳が赤い光りを灯す。

「俺とレイオとの関係を知る者は全て始末する。昔からそうしてきたし、これからもそれを止めるつもりはない」
殺気を放つジンに対し、チェスはあくびをするとあきれたといった顔をして腕を組んだ。
「あんた、見たところ“闇竜”の呪いにかかってるねぇ、私が取り払ってやる。代金は後払にしといてやるから有り難く思いな?」
ピシュッと音をたてジンの姿が消えると、次の瞬間チェスの真横で竜剣を構えていた。

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