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武竜戦記
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武竜戦記 24

「そう思ったから…ここに来たんだろうが!!」
ジンは姿勢を低くすると左肩からセトに体当たりする。セトの体は一瞬浮き、倒れそうになるが、気付くと逆にジンが顔面を掴まれ投げられていた。

「非力であり、また無知でもあるな…」
仰向けに倒れたジンの首にセトの剣が突き付けられる。セトはユメを見て静かに笑った。

「“事情”を知らぬ者を都の戦いに巻込むとは、やはり野蛮な血は争えぬな」
「父上は野蛮ではない!!」
セトは冷たい表情をし、その逆にユメは怒りが一目で分かるほど険しい顔をしていた。ユメは光の剣を握ったまま走り出す。

「このハーフは人質にも価しないか…。お前は都から出て行け、この反乱に関係なかろう?ハーフ虐殺を正当化する者達の中に、ハーフがいては笑うしかあるまい」
「何を言ってるんだ…」
「少し前の話だ。四天老という老人達が水の都からハーフを消すと言いだした…。その四天老に仕える武将に“バレン”と“ガル”という者がいた。彼等は幼き頃から四天老を守る為に教育されてきた。そしてハーフ虐殺を開始する…」
「余計な事を!!」
静かに語るセトに向かって、ユメは容赦なく剣を振り下ろす。しかしセトはユメの攻撃を片手で弾くと、何事もなかったかのように話を続けた。

「ガルは完全な四天老主義者だったが、バレンの方はハーフ虐殺に反感を持っていたとか…。バレンは四天老に逆らおうとしていたかもしれんが、その前に反乱が起きてしまった。結果反乱軍は勝利をおさめ、四天老は公開処刑。バレンは戦死、ガルは行方不明となった。そして今回、かつての反乱軍に対してガルとバレンの娘が牙をむいた。という訳だよハーフ君、君が彼等の肩をもつ意味はあるのかね?」
「………」
セトの問いにジンは黙って俯く。

「何があったかは知らないが、君のやり方には関心できんな。機会があればまた会おう、まぁここから生きて出れたらだがな…、さらばだ」
セトの足元で小さな魔方陣が光ると、それは瞬く間に広がり床からタイラントオーガを呼び起こした。その数はどんどん増えていき、彼等の鼻息の音が不気味な雰囲気をかもしだす。

「俺は、悪なのか…?」

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