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武竜戦記
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武竜戦記 18

「偽りのカインの末裔が動きだした。僕が退治してやるから…、温和しく竜笛を渡せ」
静かな声で少女はそう言った。ジンが戸惑いながらミティカの顔を伺おうとしたが、その時彼女は既に弓を引いており、ジンが問い掛けようとした瞬間、矢は放たれた。氷で精製された矢が白い光を纏いながら少女に飛んでいく。

「問答無用、躊躇したらこっちが殺られるわよ?ジン」
ミティカの放った白く光る矢は、少女の前までいくと見えない壁にぶつかるように拡散していった。

「分かってはいたんだけどなぁ…、やっぱり強いわね」
「それがお前達の応えか…。よかろう、笛はお前達の屍から頂く事にする。いでよ、タイラントオーガ!!」
ジンはその言葉に耳を疑った。少女が召喚術を使えるというのと、その召喚対象がつい先ほど苦戦を強いられた“タイラントオーガ”だったのだ。

「ミティカ、あの子は本当に召喚術が!?」
「間違いなくタイラントオーガを召喚してくるわ…。あとあの“子”じゃないわ、アイツはああ見えて60歳以上のお婆さんなのよ」
ジン達が話してる間にも状況はどんどん悪くなっていた。少女を中心にして12個の魔方陣が地面に描かれると、それぞれの魔方陣からタイラントオーガが這い上がるようにして現われてきた。

「ミティカ…、ちょっと数多くない?」
「そうね…、ちょっと多いかも」
苦笑いをするミティカ。ジンは竜笛を取り出し天高く掲げると、竜将の名を叫んだ。

「タイラントオーガが12体だと…、オーガ族の領地に入ったのか?」
「竜将、力を貸してくれ」
「何度も言わせるな、“様”を…」
戦場を見回す竜将の首が止まった。そして竜将は睨み付ける、その相手は静かに微笑みを浮かべる黒髪の少女だった。

「久しいな“レメク”…」
「あなたが久しくしたのでしょ?探したわ」
竜将は腰の剣を抜きながら、レメクと呼ばれた少女と会話を交わす。少女は笑顔で手を叩くと小さな声で呟いた。

「殺れ」
その合図と同時にタイラントオーガ達が一斉に走りだす。涎を垂らし雄叫びをあげるタイラントオーガの走りは、地面を割る音と共に大地を揺らしていた。

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