武竜戦記 17
ガルはジンの返事に驚くと、一度咳払いをしてから説明をはじめる。
「老人達のもとにはこの部屋の隠し扉から行く事ができる。奴等を叩けばこのアホらしい殺しもなくなるはずだ」
「俺一人で行くのか?」
「お前が戦っている間、俺達は護衛の奴等を煙に巻かなきゃならん」
「そうか、最後に教えて欲しい」
「なんだ?」
「“デストロイヤー”に会わせてくれ」
ガルは困惑した顔をすると、苦笑いした。
「あの絵の人物は70年も昔の奴だ。竜人なら200年以上生きるかもしれんが、ハーフだからな…、多分死んでいるだろう」
「死んでいられちゃ困る」
「竜将の呪いを聞いて俺達に近寄ったかと思っていたが、どうやら違うようだな…」
「ああ、竜将の封印を解いてもらう為にお前達に接触した」
─それは昨晩の事…
「いい?あんまり調子にのってると今度こそ死ぬわよ!!」
「分かりました、分かりましたから。その話するのこれでもう6回目ですよ?」
「何回しても言い足りないわ。自分の力を過信してたらそのうち殺されるわよ!!ホントに分かってるのかしら」
ジンはタイラントオーガ戦の事でミティカにしつこいぐらいに叱られていた。そして彼等が十六夜を寝かせる為に向かう先、それが水の都だった。
「それにしてもよく寝てるわよねぇ、たいして働いてないくせに」
「ミティカ!!」
十六夜を担いだまま竜鳳が急に叫ぶ。彼が指を差したその先には、まだ幼さの残る黒髪の少女がいた。
「ちょっと何であんなのが…、竜鳳、ジン、戦闘体勢よ!!」
訳が分からぬままジンは竜牙を構える。剣先の向こうにいる少女、彼女は黒いマントをなびかせながら宙に浮いていた。