武竜戦記 13
「え、あ…、ごめん…」
何でミティカが泣きそうになっているのかは分からなかったが、ジンは自然とそう呟いていた。
─次の日の夕方、三人は“水の都”にいた。ベッドで寝ていた十六夜が大声を出して跳ね起きる。
「火焔!!ぎり、ぃ…」
「プププ」
「…ん?ここはどこだ?」
少し照れた様子で十六夜がミティカに声をかける。ミティカは口につけていた掌を元に戻すと、椅子に座り肘掛けに肘をおいた。
「ここは水の都の宿屋よ、よっぽど疲れてたみたいね」
「俺はどれだけ寝てた?」
「五日よ?」
「五日!?マジでか…、それでアイツは?」
「アイツって?」
「タイラントオーガに決まってんだろ!!」
ミティカは元気な十六夜を見て、ため息をついた。
「あんなの私の必殺技で一撃よ、フッ…」
左右の掌を天井にむけるミティカの仕草は、人をイライラさせるオーラを放っているように十六夜には見えていた。貧乏揺すりを始める十六夜。
「で、ジンは?この部屋にはいないみたいだが」
「彼が気になるの?」
「俺の仕事は奴を竜の所へ無事に連れて行く事。20万リアロの報酬だ、死なれちゃ困る」
「彼なら大丈夫よ、都の中を散歩しに行っただけだから」
「おいおい、“ハーフ”一人でこの町を散歩させるなよな…」
「心配なし、大丈夫よ」