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武竜戦記
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武竜戦記 11

「早くして、もう時間がないわ!!」
ミティカがイライラした様子でジンを呼ぶ。しかしジンは竜剣・竜牙を構えると彼女に背を向けた。

「先に町へ行っておいてくれないか?」
「え、ちょっと何する気!?」
「必ずタイラントオーガの角を持ち帰るよ」
ジンはそう言うと逆走し始めた。そう氷の下のタイラントオーガに向かって。彼に勝算があった訳ではないが、竜将に自分の力を見せるには“今回しかない”そう思っての行動だった。

「ダメージが残っている間に奴の弱点を…斬る!!」
氷岩にひびが入っていく、それはジンが近づく程酷くなり、氷が竜牙の間合に入った時には粉々に吹き飛んでいた。氷の舞う中、タイラントオーガの不気味な顔が見えてきた。

「我が力を糧に真の─」
ジンが竜剣に力を込めようとした時、既にタイラントオーガの巨体が彼の頭の上にいて、その影がジンに覆いかぶさっていた。

「うおおおおお!!」
ジンは顔を上げ叫ぶが、腕がついて来ない。落ちてくるタイラントオーガに頭突きをするような体勢になってしまっていた。
普通なら“首がへし折れ死ぬ”そう思う所だが、この絶対絶命の状態でも、ジンの頭の中には一切そんな考えはなかった。彼の頭の中にあるのは“勝つ事”ただそれだけだった。

「面白い」
タイラントオーガの巨体が直撃する直前に、誰かの声が聞こえた。するとタイラントオーガは急に落下を止めて軌道を変え地面に転がり落ちていった。ジンが声のした方へ振り向くと、すぐ後ろに竜将が立っていた。

「お前は無謀だ。勇猛と無謀は違う、だが私がその無謀を勇猛に変えてやろう」
「竜将…」
「呼び捨てにするな“様”をつけろ。」
「………」
「いいかよく聞け、今回私は奴に一度だけ剣を当てた。そこが弱点だ」
「そんなの、覚えてる訳─」
「お前の剣技“左腕”で弾かれただろ、十六夜は“右腕”に刀を突き刺した…」
「分かった!!」
その説明をきいてジンはすぐさま走り出す。目標は勿論、タイラントオーガの“右腕”。立ち上がろうと右腕を地面につけているタイラントオーガに、ジンは容赦なく斬撃をくわえる。

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