時が止まるとき 26
「――ユエさん、いくら彼女が危険凶暴凶悪生物だからって遠慮することはないんですよ? 自分の意見はハッキリ言わないと」
唐突に、滝さんの手伝いをしていためぐみくんがこちらに顔を出して言った。
「って誰が危険凶暴凶悪生物よ!」
「はは、誰って、今日かなり大量の人間を持ち前の凶暴さで『うっかり』爆死させるところだった人ですよ。――誰でしょうねえ?」
「ぐ、……あ、あれはつい手が滑って……」
「……ミナ、認めてるよ?」
こっそりため息を吐いた。
みんなとても元気だ。日中にあれだけドンパチやったのに。
それに私は《マザー》のことも気になる。結局は爆発騒ぎでうやむやになっちゃったけど、でも逆に、あれだけの騒ぎになっていたのに姿も見せなかったのはおかしいような気もする。
あんまりこういうことは考えたくないけれど、もしもマザーとかバグとかの話が嘘だったら? 二人とも私たちに何かを隠してるみたいだし……
「ん……、ユエどうかしたの? あんまり元気ないみたいだけど」
「え? あ、な、何でもないよ? ちょっと疲れちゃっただけだから」
何でも悪いほうに考えちゃうのは、私の昔からのよくない癖だ。
なるべく前向きに!!
晩御飯を食べ終えた私達は光一くんの部屋−−通称作戦室に集められていた。
「準備は良いかい、みこと?」
説明を始める前に軽く声をかける光一くん。
「同志、今回は俺様が説明を−−」
不意に役割の交代を申し出ようとするみことくん。
いつも喋りっぱなしのみことくんに裏方は辛いのかも、だけど−−
「−−準備は?」
最後まで言わせてすらもらってないし……
「……良いです」
可哀相なみことくんの返事を合図に説明が始まった。
「では皆さん、次の標的が決まりました」
光一くんがみことくんに目配せするとスクリーンにいかにもガラの良さそうな集団が現れる。
「一応彼らは自警団を名乗っていますが−−まあ、実態は見たまんまです」
「……で、ソイツ等の親玉がマザーってワケか?」
「いえ、残念ながら彼らはマザーとは無関係です」
滝さんの言葉に答えながら頭を振る光一くん。
「じゃあ何でこんなの見せてるのよ!」
「−−彼らの縄張りに発病者、つまりは不良地底人が頻繁に出入りしている施設がある、との情報が入ってきたんです」
ミナの言葉に答える様に説明は続く。