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時が止まるとき
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時が止まるとき 25

「あっはっは。何を不規則発言をしてるのかな。今現在、こうして精一杯に助けてるじゃないか」
「ち、違っ、違っ! 違わないけどこれは違うよな同士よ!?」
「うーん、意味が分からないね。いいから落ち着きなよ。――おやユエさん、お疲れさまです」
 光一くんは私に気が付くと、何か言っているみことくんは完全に無視して笑いかけてきた。人をひとり背負っているにちっとも疲れてなさそう。
「すみません、余計なものを背負ってなければ助けられるんですけどね」
「同士ー!?」
「うるさいよ。静かにしないと捨ててくよ? それとね――」
「んな!? それはひどいって同士、ってすでにそこはかとなく悪意ぐわ」
 みことくんの不自然に言葉が切れてからワンテンポ遅れて、
「……そんな姿勢で喋ってると舌を噛むよ?」
「……」
「さあユエさん、こんなことは気にせず急ぎましょうか」
 いいのかな、って思ったけど、きっと二人なりのコミュニケーションなんだろうって自分を無理に納得させた。ごめんなさい、みことくん。
 
 紆余曲折あったけど何とか無事に脱出した私達の後ろで爆音を轟かせながら崩れ去る教団ビル。
「全く、機械オタクのせいで一時はどうなるかと思ったわよ!」
 そう言うと(泡を吹きながら)目を開けたまま寝てるみことくんを足蹴にするミナ。だけどその顔には笑みが浮かんでいる。
「まあだけど、こうして無事教団は潰せたんだ。それで良しとしようや」
「そうですね」
 互いに顔を見合わせて満足そうに笑いあう滝さんとめぐみくん。
 私も心地良い疲労感と充足感に包まれる。でも何かを忘れてる気が……
「皆さんが無事で本当に良かった。おそらくこれで目障りな教団もおしまいだろうし−−まっ、これでマザーも確保出来てたら文句無かったんだけどね」
『あっ……』
 光一くんの言葉により皆の『時が止まる』。もちろん私も……

十五分後−−
「僕達すっかり本来の目的を忘れてましたね……」
「言うな。さっきまで浮かれてた自分が哀れになってくる……」
「ハァ〜……結局私達にとっては無駄骨かぁ〜……」
 見ている方が心配になる程落胆する三人。
 そして、私はと言うと実はそんなにがっかりしてない。
 確かに無駄骨折った形になっちゃったけど、普段の生活の中じゃ絶対に出来ない色んな体験が出来たから−−


「ちょっとぉ〜、御飯まだぁ〜?」
 不機嫌そうに容赦無く催促の声をかけるミナ。
「さっきから同じことばかり言ってるな。全く少しは作る方の身にも……」
 調べ物で手の離せない光一くんの代わりに晩御飯の準備をしている(させられてる)滝さんの文句が聞こえてくる。
「だってしょうがないじゃない。お腹空いてんだから。ね〜、ユエ」
「ハハ……」
 満面の笑みで賛同を求めるミナに苦笑で応える私。

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